平成28年度第2回:「女性リーダー育成セミナー~リーダーへの自信と意欲をもつために~」

岩崎育英奨学会 政経マネジメント塾

平成28年度講座内容

【第2回講座】 女性リーダー育成セミナー
~リーダーへの自信と意欲を持つために~

講師
外山 麻衣氏(株式会社シー・シー・アイ 組織開発コンサルタント)
場所
リバティークラブ(鹿児島県鹿児島市千日町15-15)
放送予定日時
平成28年10月15日(土) 12:30~13:30 ホームドラマチャンネル
平成28年10月15日(土) 06:00~07:00 歌謡ポップスチャンネル

※以降随時放送
詳しい放送予定はこちら(ホームドラマチャンネル歌謡ポップスチャンネル)

外山 麻衣
(そとやま まい)
株式会社シー・シー・アイ
組織開発コンサルタント

(株)シー・シー・アイ 組織開発コンサルタント。銀行での営業職、地方テレビ局アナウンサー、アメフトチームのチアリーダープロコーチなどを経験。不況による企業の合併やスポンサーの撤退を自身が経験し、「一人ひとりの頑張りが成果に結びつく組織づくり」の必要性を感じる。現在はチアリーダーコーチとして日本一の組織づくりを行った経験をベースに、「個人のやりがいの追及」と「持続的に成果を上げ続ける組織づくり」の両立を目指し、活動中。

講義内容

 

◇岩崎芳太郎塾長のお話

岩崎塾長:

この国で、女性の活躍に関する法律ができたことをご存じの方は、いらっしゃいますか。あまりいないですね。私はあまり好きな話ではないのですが、1億総活躍という考えの下に、女性の活躍推進法といって女性をどのように活用するのか、活躍させるのかという行動計画を決めて、実行して、女性が活躍できる社会をつくっていこうという法律です。

 

今も申し上げたように、私は、このような発想はあまり好きではありません。私は専門家ではないので数字を持っていませんが、そうしたことに関するアンケート調査が、日本でよく行われています。

企業の経営者に、大概は男の人ですが、「女性の登用に関して、差別的にしていますか」と質問すると、していないという答えのほうが多いです。ところが、今度は女性にアンケートを採ると、「女性として、登用や昇進にハンディを持っていると感じますか」という質問には、多くの女性が、ハンディを感じているという話です。

 

この数字のギャップは何かが、一つの問題になってきます。今の日本では人口が減っていって、特に地方の企業は、どんどん県外に若い人が流出しているという意味でいくと、男女差別のような話で女性を人材として考えない経営者は、近い将来、会社をつぶします。話は、ここでおいておきます。

 

きょうの外山先生のセミナーのテーマは、『リーダーへの自信と意欲を持つために』です。最近、日本でリーダーという言葉がよく使われます。私は鹿児島商工会議所会頭で、経済界のリーダーと呼ばれます。会頭という肩書をもってして、リーダーと呼ばれています。日本の社会においては往々にして、団体のトップにある人をリーダーと呼びます。それは、日本語の使い方として間違いではありませんが、リーダーの本質は、肩書ではありません。リーダーが持っていなければならない要件というのは、リーダーシップです。ですから、リーダーとは肩書きを持つだけではなく、リーダーとして役割を担うべき人はリーダーシップを持って、一定の責任感がなければなりません。

 

私の会社はオーナー会社で、経営の方式もトップダウンです。そのトップは紛れもなく、男女がほとんど平等です。変なことを言いますが、私は、女性の取締役でも中間管理職でも、厳しい叱責を与えます。女性だからといって容赦することはありません。そのくらい経営、仕事に関しては男女の性別に関係なくしているようなトップのいる会社でも、現実は男性役員のほうが多く、中間管理職が多いし、特に鹿児島は「男尊女卑」と言われる社会です。

鹿児島商工会議所の議員も100人いますけれど、女性の議員は3人です。鹿児島は、100人のうち3人しか女性議員がいないという社会です。その中で皆さんは、ぜひ、鹿児島が今後とも繁栄を続けるために、私どもの子どもや孫が私どもと同じように、もしくはそれ以上の良い生活や将来を得るために、リーダーになっていただかなければ困ります。

 

ただし、皆さんは男性と競争して、勝っていかなければ上にはいけません。それは、社会においても、会社の中においても同じです。しかも、それはハンディ戦だということを自覚してください。実際は、男性社会なわけですから。

 

今言ったのは、私が男性の目から見て、皆さんはハンディを背負っているという話です。外山先生からは、逆に女性の目から見て、私どもにはこのようなアドバンテージがあり武器を持っているにもかかわらず、皆さんは、それをきちんと使っているのか、戦いに勝ち抜くための心構えが十分にできているのだろうかという講義を、するかもしれません。

以上、私が何を言いたいかというと、ハンディ戦を頑張ってください。それは、鹿児島のためにというお話をして、終わりたいと思います。どうもありがとう。

 

 

◇講義:「女性リーダー育成セミナー~リーダとしての自信と意欲を持つために~」

 

外山先生:

本日のこのセミナーの目標は、自分自身が組織の中で生き生きと働き、影響力を与えている姿を具体的に描くことです。内容としては、皆さんもたくさんのニュースや話題を耳にされていると思いますが、あらためて、今、どうして女性リーダーが必要なのかを、まず考えていきたいと思います。

2つ目は、実習で価値観の明確化をします。皆さんご自身の中にある価値観を、少しお時間を取って整理していきたいと思っています。

3つ目は、組織の中で影響力を考えるとことです。大きく分けてこの3つの内容で、セミナーを進めていきたいと思います。

 

今、なぜ女性リーダーが必要なのかというお話をしていきたいと思います。先ほど塾長からのお話にもありましたけれども、女性活躍推進法が、今年の春から施行されました。実際、私もクライアントである301名以上の企業さまの中で、行動計画をつくらなければいけないというご相談をいただいている方もいらっしゃいます。こうした流れの中で、女性がリーダーにならなければいけない、女性の管理職を増やさなければいけないという声も確かにありますが、私は、それだけではないと思っています。

 

では、実際に女性がリーダーとしていろいろな場面で活躍することによって、どのような効果を期待されているのでしょうか。例えば消費者として、もしくは利用者としての女性の視点を活用してほしいというお話をよく聞きます。政府が、今後新たな需要の創造につながる産業ということで、環境エネルギー、健康、観光、地域活性化を挙げています。そうした中で、健康に関わるような商品を女性の視点で開発しようというようなお話は、今、私たちの身の回りにたくさんあります。

 

女性の視点を活用した事例の1つとしては、ノンアルコールビールがあります。もともとは、飲酒運転という問題がクローズアップされて、ノンアルコールビールが商品として、非常に多くのラインナップが並んできました。けれども、妊娠をしているとか、まだ赤ちゃんが小さくて母乳をあげなければいけないというお母さんでも楽しめるようにといった観点も入ってきて、あるビール会社で女性に受けるようなパッケージを開発したところ、非常に売れたという事例もあります。そこはまさに、消費者としての女性の視点が生かされた事例だと思います。

 

もちろん、そうした商品開発に視点を生かすというのも大事ですが、きょう、私がお話ししたいのは、組織が成果を出すために女性の視点、女性の存在感をどのように生かしていくかです。そのために前提として、時代背景から見た女性リーダーの必要性というお話をしたいと思います。

 

こちらは、内閣府が発表した日本の名目GDPの推移というデータを、グラフにしたものです。これを見ていただきますと、グラフの始まりは1955年ですから、日本が高度成長期に入ったと言われるころから始まり、2014年までのデータでつくっています。

まずこれを見ていただきますと、初めが8兆3,695億円からスタートしますが、10年間で32兆8,660億円と、およそ4倍になっています。そして1990年、バブルが崩壊する少し前に442兆7,810億円と、50倍くらいまで成長して、その後は、ほぼ横ばいで推移しています。ここで女性リーダーの必要性という観点で見ていきたいのは、1990年を境に、私たちに求められている働き方、組織の中での成果の出し方も変化してきています。どのように変わったのでしょうか。

 

1990年より前は、過去、もしくは市場に正解があると言われていました。例えば、昨年、この商品がこのような形で売れたから、もう少し販売取扱店を増やせば数字が上がるとか、この作り方をしてこのくらいの数量ができたので、スピードアップするために工場を増やして、一気に倍の数を作れるようにしようといった形で、どんどん企業、組織が規模を大きくしたり、作業の効率アップをしてきた時代です。ですから、私たちの仕事の仕方は規模の拡大、人をたくさん採用したり、拠点を増やしたり。それから効率性を求めるということで、いろいろなものがマニュアル化されていきました。そのマニュアルをしっかりと真面目に守ることが、仕事の仕方としては非常に重要視されていました。

 

では、1990年以降、何が変わっていったのでしょうか。過去にも市場にも、答えがなくなっていきました。これは、つぶれるはずがないと思っていた銀行が合併しなければ生き残れなくなったとか、当たり前だと思っていたことが、当たり前ではなくなっていきました。

 

または、業界を越えたさまざまなコラボレーションを、よく目にされると思います。そうしたものも、一昔前までは考えられませんでした。例えば、本屋で食材を売っているというような発想は今まではありませんでしたが、私たちの常識を越えるような方法が世の中に出てきて、それがスタンダードになってきているという変化が、私たちの周りで起こっています。そのときに、私たちはどのような動き方、働き方を求められるようになったかというと、新たな価値の創造、「イノベーション」という言葉もよく聞きますが、いかに今までにない発想ができるか、今までにない動きができるかということが、非常に重要視されています。

 

私も、こうした仕事をしていてさまざまな企業のご相談、特に人材育成のご相談に乗ることが多いのですが、最近、非常に多いのは、「イノベーションを起こせる人材を教育、育成したい」という声を、よく聞きます。ただ、頭では分かっていても、明日からイノベーションを起こすことは、私たち人間には難しいのです。自分の日ごろのものの考え方、捉え方、組織としての動き方を変えていかないと、実は、こうした人材育成や組織づくりは、非常に難しくなっています。ですから、イノベーションが起こせるような組織づくりや人材育成ができている企業は、やはり、頭一つ抜けています。

 

1990年前後での成功のセオリーを簡単な言葉で表現すると、1990年以前は、誤解を恐れずに言うと、「変えない、考えない」ことです。考えないというのは、自分で何かアイデアを出すというよりは、決められたことを一生懸命、とにかくきちんとすることが重要視されていました。それが現在は、「変える、自分で考える」、自分の力で考えて動いてみるといったことが、非常に重要視されてきています。

 

その中で女性リーダーも、自分でマニュアルをしっかり守って作業できるという動き方よりも、さまざまな豊かな発想で、いろいろな物事にチャレンジできる人材が求められていると思います。このような世の中の動き、変化を見たときに、私たちはどのような所を意識して組織のリーダーとして頑張っていけばいいのかを、今日は考えたいと思っています。

 

もう1つ皆さまに考えていただきたいのが、私たちを取り巻く環境がどのように変わっているかというデータを、お見せしたいと思います。これは、総務省が発表した『情報通信白書』です。わが国の高齢化の推移と将来推定です。見ていただくと非常に分かりやすいのですが、赤の線が高齢化率です。直近ですと2015年が26.8パーセントで、2025年で30.3パーセント、2035年、20年後には33.4パーセントになります。

私たちは、このままいくと本当に少子高齢社会になっていき、つまり、働き手が少なくなっていきます。労働人口の減少が予測される中、女性活躍推進が、特に近年叫ばれるようになってきたという背景があります。

 

もう1つ注目しておきたい変化として、インターネットの普及があります。今は当たり前に、私もスマートフォンやパソコンを使っていろいろな調べものをします。何がいつ頃から始まったのかを見てみると、ウィキペディアは2001年ですから、2000年を越えてからです。ユーチューブは2005年から、フェイスブックが2006年、ツイッターも2006年からと、この10年くらいの間で、私たちは非常に手軽にさまざまな情報を得ることができる様になりましたし、地域や国境を越えたやりとりが可能になりました。一昔前は、海外の方とフェイスブックでつながるといったことはとても遠い話でしたけれども、今は簡単にできます。つまり、ビジネスのスピードも非常に速くなっています。私たちは、そのスピードにいかに対応していくかが、ここ10年で非常に求められるようになってきました。

 

それからもう1つ、1人で仕事をすることが増え、より「個業化」しているとも言われています。これは、職場に一人一台パソコンが設置されていることで、パソコンでできる作業が増えた分、誰かと話をするよりも、まず、自分で作業をして、メールでやりとりをすることが増えていくと、皆で相談して進めていた仕事を、1人でする量が増えてきたとも言われています。そうすると、速い情報に対応しつつ、でも、一人一人のアイデアがなかなか外に出づらくなっている中で、リーダーとして組織をどうまとめていくかという観点が、非常に重要です。

 

それからもう1つ、働き方の多様化があります。これは、正社員を中心とした職場から、派遣社員や契約社員、パート、アルバイト等が混在する職場に変化しています。私自身も、正社員の経験もありますが、派遣社員やアルバイトの経験もあります。さまざまな立場で組織に所属したことがありますので、自分自身にとっても、当たり前の感覚です。ただ、一昔前は、正社員が圧倒的に多かったと思います。そうすると、さまざまな価値観や働ける時間も限定されている方が増えてくると、いかに短い時間の中できちんとコミュニケーションを取って仕事をしていくかというマネジメント力も、難度が高くなってきていると感じます。

 

その下にある国境を越えたコミュニケーションの必要性も、高まってきています。皆さまの会社にいらっしゃるかどうか分かりませんが、私がお手伝いしている企業でも、海外からいらした方を社員として迎えていたりして、グローバル化が進んできています。

国籍を越えたということは、自分が当たり前だとと思っている文化も違います。そうしたことを越えた中で、いかに1つの組織として目的を達成するのかは、マネジメントとしては高度化して、難度が高まっていると思います。

 

また、時短の勤務や在宅勤務も出てきていますので、会ったときにいかにコミュニケーションを取るか、会えないときには、どのようなやりとりをすれば意思疎通が図れるのか。ここも、スキルが必要になってきていると感じます。

余談ですけれども、私もこうした仕事をしていて、いろいろな所を飛び回っていますので、普段、会社のメンバーと、ずっと一緒にいられるわけではありません。本当に久しぶりに会ったという中で、チームとしてどのようにして同じ仕事をしていくかは、私にとっても非常に重要なテーマです。密なコミュニケーション、質の高いコミュニケーションが求められていると感じています。

 

このような環境変化の中、いかに組織力を高めていくかが、リーダーにも求められています。自分が能力を発揮するだけではなく、自分が所属しているチーム、組織の力を高めていく力が、これからのリーダーに求められていると感じています。

こうした背景を考えながら、今回のテーマで、皆さんにしていただきたい実習です。「価値観の明確化」「生き生きと働いている私とは」ということで、皆さんご自身の中にある価値観、大事にしているものをあらためて整理したり、言葉にして人に伝えていく実習を、これからしたいと思います。

 

実習に入る前に、なぜ、価値観の明確化を行うのかをお話ししたいと思います。組織として成果を出すということは、どういうことでしょうか。組織の中にある戦略を、働いている一人一人が自分の中で理解し咀嚼した中で、自分の価値観とうまくリンクさせて照らし合わせながら行動していくことによって、初めて成果が出ます。どんなに素晴らしい戦略があっても、「ああ、それはすごいですね」と待っているだけでは、何の変化も生まれません。一人一人が何かアクションを変えていかないと、成果は出ません。

 

そのときに、戦略がどこまで理解できていて、実現の可能性をどのくらい持てているのかも大事なのですが、もう1つ大切なのは、個人の価値観です。あらためて、自分は何を大切にして仕事をしているのかという価値観を自分できちんと把握していないと、どこにギャップがあるのか、どこに共感できるのかが理解できないまま、タスクだけ、仕事だけが降ってくる状況になります。気が付くと、「自分は、何のために頑張っているのだろう」という状態になってしまいます。これが続くと「やらされ感」が大きくなり、だんだん疲弊していって、しまいには仕事を辞めてしまうという負のスパイラルにはまってしまうわけです。ですから、あらためてこれからリーダーになる皆さんが、自分はどのような価値観を持って、今、この場にいらっしゃるかを、少し時間をかけて、明確にしたいと思います。リーダーが自分自身の価値観を自己理解して、組織の戦略が自分にとってどのような意味があるのかが明確になって、初めて行動に踏み出すことができます。

 

実習:『人生の棚卸し表』

 

それでは、ここから実習に入りたいと思います。まず、皆さんにしていただきたいのは、これから、「人生の棚卸表」を作っていただきたいと思います。

 

自分の人生を、「人生の棚卸表」という1本の線で表現して、現在の価値観を作った源泉を整理することによって、自分にとって生き生きと働いている姿はどのような姿なのか、それを実現するために何を大切にして、何を変えていけばいいのかを明確にすることが目的です。

 

私たち人間は、自分の意識の下に眠っていることも、結構あります。それが10年、20年と経験を重ねるほど、実はいろいろな経験をしているのに記憶の彼方に飛んでいってなくなってしまうことがありますので、ここは、自分の記憶を掘り起こしながら、今まで気付いていなかった大切なものを探す時間にしたいと思います。

 

これから、書き方をご説明します。横軸は、時間軸です。縦軸にどのようなキーワードを置くのかは、皆さんにお任せします。自分の人生を線で表すとき、何を軸として置くと書きやすいのかは、人それぞれだと思います。まず、そこに置くもの自体が皆さんの価値観になると思いますので、それはお任せします。

 

例えば、どのように書くのかを説明します。

 

ナレーション:

講師の外山さんが自身の場合として示した人生の棚卸し表です。誕生から現在に至るまで、節目節目の出来事を思い出しながらこれまでの体験を1本の線で表しています。

 

外山先生: 

自分にとって天職かもしれないチアリーダーのコーチという職に出会いました。そのとき日本一という経験をして、自分だけではなく、皆が一緒に喜んでくれるというのは、こんなにうれしいと気付きました。ただ、その数日後、実はチームが解散してしまって、地獄の底に落ちていきます。いろいろ試行錯誤して悩む中で組織開発というものに出会って、もしかしたらこれが、自分自身ができなかった一人一人の頑張りが成果に結びつく組織づくりに何か役立てるのかもしれないという思いで、今、仕事をしています。

 

私の場合は、やりがいを軸にして書いたので、皆で何かをして達成感があったとか、日本一を取ってたくさんの人に喜んでもらえたけれど、仕事がなくなって自分の存在意義が分からなくなったときに、結構、分かりやすく上下しています。これは、ここに何を置くかによっても、激しく上下するのか、なだらかな線になるのか等の違いがあると思います。一度、ご自身で考えていただいて、どのようなキーワードが自分のここまでの人生を表すのに一番しっくりくるのかも含めて、考えてみてください。

 

ナレーション:

自分の価値観を明確にしていく自習です。テレビの前の皆さんもやってみてください。用意するのは紙と鉛筆のみ。

線を書き終えた跡で講師がいくつか質問をしますので自分の表に書き加えてください。

 

外山先生:

私から、幾つか質問をします。その質問に対しての答えを書き込んでいってください。それを書き込んでいただくことで、さらに自分にどのような価値観があるのかを整理していきたいと思います。

 

では、まず1つ目の質問です。書いていただいた折れ線の中で、一番高い山に印を付けて、そばに、その理由を書いてみてください。

 

2つ目の質問です。今度は、折れ線の一番低い谷の部分に印を付けて、どうしてそこが一番低い谷になっているのか、簡単で結構ですので、自分で分かるように理由を書いてみてください。

 

3つ目の質問です。公私問わず、自分が今まで出会えて良かったと思う方のお名前を、出会った頃に書いてみてください。何人かいらっしゃったら、複数名書いていただいても結構です。

 

4つ目は、公私問わず、できればあの人には出会いたくなかったと思う方がいらしたら、出会った頃に、その方のお名前を書いてください。

 

5つ目は、今の自分の価値観に影響を及ぼしている言葉や本、音楽、映画、何でも結構です。自分の価値観にすごく影響を与えていると思うようなものがありましたら、出会った頃に書いてみてください。

 

最後の質問です。ここまでは、今まで皆さんが記入された自分の人生の1本の線について質問してきました。今度は、未来についての質問です。自分の10年後をイメージしたときに、10年後の自分は、どんな人とどんな場所で、どんなことをしていると思いますか。現在から右側の未来の場所に、自由に書いてみてください。未来の話ですので、何を書いても自由です。

 

ナレーション:

あなたの価値観を探る「人生の棚卸し表」この後、さらに明確にしていきます。

 

外山先生:

ここまでは、自分で自分の人生を1本の線で表現していただき、私から幾つか質問をさせていただいて、自分の中にある価値観を、少し深掘りしてみました。どうでしょうか。こんなことがあったんだとか、そういえばこんな経験をしていたんだということが、結構ありませんか。普段、私たちは、特に仕事に追われてしまうと目の前にあることを処理するという気持ちが働いていろいろなことを忘れてしまいますが、実は、皆さんの中にはいろいろな経験があって、それがまさに今の皆さんを作り上げていることをイメージしていただくために、このような実習をしました。

 

ここからはグループの皆さんと共有して、お話していく時間を取りたいと思います。次の実習に移ります。サーキュレート・ダイアードという実習です。今書いていただいた人生の棚卸表を基に、同じグループの参加者との対話を行うことで、さらに自分の価値観を深掘りしていく時間です。また、自分の価値観も深掘りしてくと同時に、他の方に対して伝える力を身に付けたり、仲間の行動や思考の源泉を聞くトレーニングにもなりますので、ぜひ、そうした観点でもチャレンジしていただきたいと思います。これは、基本的に2人1組になって行う実習です。サーキュレートというのは循環するという意味で、ダイアードというのは対です。2つで1つという対を表現しています。

 

ナレーション:

二人一組で「話し手と」と「聞き手」に役割を分けます。作成した人生の棚卸し表を見ながら、講師が投げかける質問に対し「話し手」が答えていくものです。グループ間で役割や相手を代えながら進めていきます。

 

外山先生:

自分が感じていることを、さらに人に話すことによってもう一段深掘りしようというのが、このサーキュレート・ダイアードの目的です。ただ、皆さんが先ほど書かれた人生の棚卸表は、非常に個人的なことを書かれていると思いますので、見せたくないという方は、人に見せなくて構いません。それから、私が質問した内容についても、それについて直接話をするのが嫌だと思ったら、話さなくて結構です。ただ、質問されて答えづらいとか、言いたくない気持ちが湧いているといったように、どんな気持ちなのかは、相手の方にお話してください。その質問を投げかけられてどんなことを感じていらっしゃるのかは、ぜひ、相手の方にお話しいただきたいと思います。

 

この実習の中でご自身の価値観をより明確化して、それが人に伝わるように整理していくためのポイントとしては、聞き手の方が大事です。ぜひ、じっくりと相手の話に耳を傾けてください。この時間は、相手のお話を評価したりアドバイスをしたりする時間ではありません。ただ、じっくりと相手の話を受け止めるということをチャレンジをしてみてください。そして、話し手の方は、質問内容に対して、もしかしたらすぐに答えられなくて言葉に詰まってしまったり、考え込んでしまうかもしれません。そのときは、聞き手の方は、沈黙にも付き合ってあげてください。沈黙して言葉に詰まっているということは、その方の中でもう一段、自分はどうしてそう思ったのか、そのとき何を感じたのか、どんなことを大事にしているのだろうかと深掘りしている時間でもあるので、その時間にお付き合いいただいて、遮らないというのが大事なポイントです。

 

では、始めていきたいと思います。まず、1つ目の質問です。皆さんに、先ほど人生の棚卸表を書いていただきました。これを書いてみて、あらためて思う自分が大切にしたいことは何ですか。

 

2つ目の質問です。本当はしたかったけれど断念したこと、悔しかったことは、どんなことでしょうか。

 

ナレーション:

講師からは他に、一番生き生きしていた瞬間や職場における理想のじぶんについて。そして、個に実習をやってみて感じたことが質問としてあげられました。

 

外山先生:

人生の棚卸表を書いていただき、それをベースにサーキュレート・ダイアードという実習を通して、ご自身が大切にしている価値観といったものを人にお話しすることで、より明確にしていくという実習をしました。皆さん、お話が非常に盛り上がっていて切るのが惜しいのですが、時間に限りがありますので、途中で切らせていただきました。

 

ここからは、今、体験していただいたことをどのように職場の中で生かしていただきたいかということで、最後の項目です。組織の中での影響力、特に女性リーダーの影響力について考えることを、最後にお話したいと思います。

 

今、皆さんに自分の価値観を明確にしていただきました。それと同時に、相手の価値観をしっかりと聞き切ることを、先ほどの実習の中で体験していただきました。皆さんの資料にも書いてありますが、組織力を発揮するためにリーダーとして知っておきたいこととして、こちらの公式をご紹介したいと思います。

 

組織開発の研究の第一人者であるクルト・レヴィンが考えた公式です。クルト・レヴィンは、さまざまなリーダーシップスタイルや集団での意思決定、グループダイナミクスといったものを研究してきた方です。

 

B=f (P*E)

 

彼の公式の一番左側のBは、英語の「behavior」行動の頭文字です。組織の構成員がどれだけ成果につながる行動ができるのかは、関数f、PとEのかけ算だと言っています。

Pは個人「Personality」の能力です。専門能力、対人関係能力、自分が考えていることをどのように形にできるかの概念化能力といった個人の特性。

Eというのは、環境「Environment」のEです。環境というのは、もちろん物質的な環境があります。フロアが分かれていたオフィスを同じフロアにしたら、コミュニケーションがよく取れるようになったといった環境もありますが、もう1つ、心理的環境も、組織開発の世界では、非常に重要視しています。

 

特に環境の要素を見ていただくと、1つは「ビッグE」=「上司」の存在。リーダーの影響力が、環境の要素に非常に強い影響力を持っていると言われています。上司がどのような意思決定をするか、どのようなマネジメントをしていくかというのは、職場に対して、集団に対して、非常に強い影響力を持っています。

 

2つ目の環境の要素として、組織文化や風土もあります。これは横に解説してありますが、組織文化、風土には構成要素がありまして、こちらに4つ挙げています。

まずは「どんな価値観なのか」。例えば性善説ですか、性悪説ですか。

次は「どんな規範があるか」。これは、人間が集団に入ったときに無意識に合わせ行動をすることを指して、規範と言っています。

次の「サポートシステム」ですが、何か違うことをしている人がいたときに、組織の中でそれをきちんと指摘してあげられるといったサポートシステムが働いているかという点です。

次は、「評価システム」です。新しい意見を言う人がとても評価される会社もあれば、一方では、自分で意見を言うよりも、上司が決めたことをきちんと守る人のほうが評価されるなど、いろいろな組織があります。自分の組織には、どのような評価システムが働いているでしょうか。

こうしたものが組み合わされて、組織文化、風土ができています。

 

この中で、私たちはつい個人の評価に目が行きがちですが、どんなに優秀な人を採用しても、どんなに個人の力を伸ばしても、環境の要素もきちんと手を打っておかないと、組織で生産的な動きができなくなっていきます。ですから、皆さんにリーダーとしてぜひ意識していただきたいのは、皆さんが個人として組織にどう貢献するかという能力はもちろんですけれども、皆さんご自身も、環境の要素をつくる1人の存在です。特にリーダー、管理職といった役職に就くほど影響力が強くなります。

 

自分自身の存在が環境の要素に影響しているという自覚を持つことと、先ほどしていただいたように自分の価値観をきちんと伝え、相手の価値観をきちんと受け止めるというコミュニケーションを取ることが、自分で考えて動ける生産的なプラスの組織の文化、風土をつくるために、非常に重要です。どんなにいいアイデアを持っている人が10人集まっていても、皆が自分でそれを言葉にできなかったら、組織としては全く成果が出せないのです。まず皆さんが先頭に立って、そうした話がしやすい規範を作る動きを広げていくことによって、リーダーとしての存在感も非常に大きくなっていくと思います。

 

本日の流れをあらためて見ていくと、最初に、今、なぜ女性リーダーが必要なのか、時代背景から見た女性リーダーの必要性をお話しました。それを踏まえて、価値観の明確化をしていくために人生の棚卸表をつくり、お互いにサーキュレート・ダイアードをしながら、共有していきました。そして今、組織の中での影響力を考えるために、こちらの公式をご紹介しました。

 

女性リーダーがプラスの影響力を与えるには、今申し上げたように、自分自身が組織の文化、環境の要素をつくっている1人だということを自覚して、お互いにオープンに話ができてアイデアを共有できるような風土を、皆さんがコミュニケーションを取って、つくってください。話を聞くということです。先ほどの経験も生かしていただいて、そうした文化づくり、風土づくりにも貢献していただければと思い、お話をしてまいりました。

 

最後に、短い時間ですが、グループで、きょう、このセミナーを受けてみて一番の学び、気付きは何だったのかを、1つで結構ですので、3分ほどお話してください。

これから、模造紙とペンを皆さんにお渡ししますので、そちらに、自分のグループはこんなことを学んだ、気付けたということを1つでいいので書いていただいて、お互いに共有して終わりたいと思います。

 

ナレーション:

グループ内で改めて今日学んだことを話し合い、まとめてもらいました。みなさん、どんなことを感じたのでしょうか。

 

外山:

では最後に、せっかくですのでひとグループごとに前に来ていただいて、模造紙をこちらに貼っていただきながら、代表の方に、一言お話しを伺いたいと思います。そちらのグループから、お願いします。

 

1班:

私たちのグループは、共有の大切さ、心強さを、一番、学びました。皆それぞれに同じような境遇で同じ悩みを抱えているのですが、なかなか相談相手がいない中で、きょう聞いてもらうことによって新しい考え方も生まれて、また職場の周りの人の気持ちも気付けていくのではないかとい感想が出ました。以上です。

 

外山:

拍手をお願いします。ありがとうございました。次に、そちらのグループ、お願いします。

 

4班A:

私たちのグループは皆さんより年齢がアップしていると思いながらも、やってまいりました。「全ての過去は、人生の財産。LOVE」ということで、私たちの思いを、こちらのハートの中に書き込みました。

実は、自分たちでいろいろな話をしている中で、過去を振り返ると、仲間や会社のスタッフ、お友達に、本当にたくさん助けられてきたというのが一番の思いです。ずっと振り返って見ると、こんなにたくさんの仲間が私を支えてくれたというのが、皆の意見でした。今日、この講座を聞いて、もっとコミュニケーションをたくさん増やして、たくさんお話しをして、もっと絆を深めなければいけないということを、あらためて感じ取りました。どうも、ありがとうございました。

 

外山:

ありがとうございました。

 

4班B:

年配の人が多いので、若いときに「今が最悪」と思った時期を乗り越えてきているメンバーです。何かありましたら、いつでも相談してください。以上です。

 

外山:

素晴らしいです。ありがとうございます。心強いですね。

 

3班:

私たちのチームは、きょうのセミナーを受けて最後に感想を話したのですけれど、それぞれがあまりにも個性が強過ぎてばらばらでしたので、「それぞれの生き様」ということを、キーワードとしました。

先ほど先生からお話があったときに、「今までの中で、出会わなければ良かったという人がいますか」というので、私自身もチームも、結構、悩みました。本当に、今の自分がある中に、この人と出会わなければ良かったという人は、多分いないと思います。この人と出会わなかったら今の自分もないので、きょうのチームでの出会いも、今後それぞれの自分たちの人生や職場でも、かなり生かしていけるキーワードになる話もいただきました。

今、このメンバーの中で、「そんなまとめだったろうか?」と思っているメンバーもいると思います。けれども、私たちのチームは今後も自分の生き様を、最後に残す、自分の人生の終わりに、どう生きたかがポイントになると思います。ただ字が大きいだけで、申し訳ありません。ありがとうございました。

 

外山:

ありがとうございました。

 

2班:

私たちのチームでは、聞く力を発揮するのは大変だという結論に至りました。皆管理職なのですけれども、じっと人の話を聞くというのは、いろいろ質問もしたいし、意見を聞いていて、「違う」と言いたいことが、たくさんあります。

今回、いろいろ学んだ中で一番学んだことは、聞くという力は大切だということを意識して、今後、仕事の中で生かしていこうという話になりました。以上です。

 

外山:

ありがとうございました。

 

5班:

私たちのグループでは、最終的に輪という意見が出ました。今回、この実習を通して、なかなかこのような機会を設けることができなかったのですけれども、あらためて女性同士で互いに意見を聞いたり話したりすることによって、いろいろな点を補うことができるということと、これから職場でそのような機会がありましたら意見を出し合って、皆と協調を高めていって、これからの仕事に役立てていきたいと思いました。以上です。

 

外山:

皆さま、ありがとうございました。限られた時間の中でしたけれども、各グループから格言的な非常に深い言葉が出てきて、私も、皆さんの言葉が突き刺さり、とてもうれしいです。このような感想を持っていただけて、ありがたいと思います。

最後にまとめのお話をさせていただきます。きょうは、女性リーダーの育成ということで、お話をしてまいりました。

 

女性活躍推進とかダイバシティーといったいろいろな言葉を耳にしますけれども、一方で、今、さまざまな仕事が機械化されていて、人工知能という分野も発達してきている中で、私たち人間の仕事は何ができるのかを、最近、非常に考えます。そのときに、これからリーダーの皆さんに求められるのは、組織に所属している人々の感情まで深めて、きちんと受け止めながら皆さんの力を引き出して、いかに組織として成果が出せる状態にもっていくかだと思います。

そうした中に、きょう経験されたことを1つでも生かしていただければ、私どもも幸いです。最後まで真剣にご参加いただき、本当にありがとうございました。最後までご清聴いただき、誠にありがとうございました。

以上を持ちまして、講義を終了とさせていただきます。ありがとうございました。

(拍手)