平成29年度第3回講座:「慶應義塾大学ビジネス・スクールin霧島」

岩崎育英奨学会 政経マネジメント塾

平成29年度講座内容

【第3回講座】慶應義塾大学ビジネス・スクールin霧島

場所
霧島いわさきホテル(鹿児島県霧島市牧園町高千穂3958)
放送予定日時
平成29年12月2日(土) 12:30~13:30 ホームドラマチャンネル
平成29年12月3日(日) 06:00~07:00 歌謡ポップスチャンネル

※以降随時放送
詳しい放送予定はこちら(ホームドラマチャンネル歌謡ポップスチャンネル)

講義内容

岩崎貴光 副理事長:
当財団は事業活動として、主に人材育成をメインに、創設者である“岩崎與八郎”が、60年以上前から鹿児島県と鹿児島の人材のために、活動をしています。東京都世田谷区で学生寮を始めたり、旧鹿児島大学工学部に寄付をしたりというような活動もしています。そういうソフトウェアを強化しないと、鹿児島はどんどん遅れてしまうという背景を元に、設立された経緯がございます。
今回の「慶應義塾大学ビジネス・スクールin霧島」は、慶應義塾大学ビジネス・スクールが下田で開催する2週間位のセミナーを私が受講した際に、こちらにいらっしゃる小幡先生と出会って、鹿児島にもこういう刺激が必要なのではないかと、ご協力いただいたという経緯がございます。

ナレーション:
今回のスクールをなぜ鹿児島で開催したのか。その意図を岩崎育英文化財団の岩崎貴光副理事長に伺いました。

岩崎貴光 副理事長:
意図としては、まず一つが“ケースメソッド”という慶應義塾大学ビジネス・スクールでやっている一つの手法が非常に素晴らしいと思いました。この手法はある企業に実際に起こった事例を用いて議論するということですが、普段、私も含めて、違う企業のケースを見るということは、ほとんどない。さらに、その設問も実際には正解が無い質問です。その正解のない問いに対して、いろんな議論を繰り返し、根拠を考え、将来のある一定の予測をして話し合うというのは、非常に考える力が身に付くのではないかと思ったのが、一つ目の意図でございます。

二つ目の意図としては、普段あまり触れ合わない方々と一緒に泊まり掛けで、こうして議論するという機会はあまりない。
やはり議論の場では、設問に対してどう考えるかというディスカッションがメインです。
実際にそのテーマに対して、「自分の会社は~だ」とか、自分の会社が直面している問題や良い部分を含めいろいろな話が出てくるので、そこで共感し合ったり、「他の会社もこうなのか」と理解し合う会話があったり。この点も極めて素晴らしいなと思ったのが、二つ目の意図でございます。

ナレーション:
慶應義塾大学ビジネス・スクールとは、どういった学校でしょうか。慶應義塾大学ビジネス・スクールの詳細について、今回のプログラムコーディネーター小幡績先生に伺いました。

小幡績先生:
慶應義塾大学ビジネス・スクールは、1962年に創立されました。大学という枠組みの中で何か新しいことをやろうと、アメリカのボストンにあるハーバード大学でケースメソッドという手法をベースにした授業を行っているビジネス・スクールがある、是非これを日本に導入しようと開設されたのが、慶應義塾大学ビジネス・スクールです。
ケースメソッドとは、実際の企業の意思決定を自分ならどうするかという経営者の立場に立って考え、受講者全員で議論をするというものです。ですから、教師から受講者が一方的に学ぶということではなく、何が問題なのかを考え、その解決策を考え、やるべきことを考え、全員で議論して最終的判断を下すというところに特徴があります。

「学ぶ」というと、「今日は学びがあった」という言い方で、何か教えてもらって新しい知識を得て帰るという発想がありますが、そういうものではありません。新しいことを知り、いろいろな刺激を受けたりしますが、それはあくまで刺激でしかない。例えば、他の企業の事例を見たり、教師や他の受講者の意見を聞いたりして、自分が重要だと思っている問題をまずは発見することが大切です。例えば、自分の会社だったら何が大事なのか。あるいは鹿児島にとって、これから何が大事なのか。あるいは何ができるのかというような問題を自ら設定し、その答えまで考えるということが非常に重要なので、全て自ら問題を発見することから考える、ということを手段にしています。

勉強というと、自己満足が多くなりがちですが、結果を出さなければいけないビジネスの場で学問を使うというのは、結果的にそのビジネスの場において自分で何かを発見するという点が重要になります。当然、知識は知識だけでは何の意味もないので、ちゃんと勝負が行われるところで勉強をするということは非常に厳しい世界ですが、すごくバランスが取れていて、やりがいがあると思います。

もし地方にいる方々が自らの地方のことを卑下し、自虐的に「田舎だから」と本気で思っているとしたら、それは大きな間違いだと思います。そこにはビジネスの種といいますか、地域の社会、伝統、歴史に基づいた素晴らしいものがありますし、人材も私の目から見ると、地方にも非常に優れた人材が多くいます。
東京はあくまで上積みなので、そこに根はない。勝負の場としてはいいと思いますが、そこに根の張った人材というものはいませんし、人材も育ちません。
ですから、元々東京というのも、鹿児島出身であったり山口出身であったり、あるいは北海道出身の人というような、地方で育った人材が東京に集まって、そこで勝負をする。そういう場なので、本当に人材が育っている、根の張った人材がいる、という意味では地方は人材の宝庫だと思っています。

地方の悪いところは、「どうせ地方だから」と卑下したり、あるいは、地方のいい人材でそれなりに成功しているのでそこから出る必要もない、と考えたりすることです。ですから、昔からのことを守って、それで満足している優秀な人材の方々に、ぜひもっと日本のためにも花を開いていただきたいと思います。地方を元気にするという言葉もあまり良くないというか、元々力があるので、やる気になれば自然と活気も出てくると思います。

ただ地方へ来ると、皆さんは「やはり東京と違って仕事がない」とおっしゃいますが、それは短期的にキャッシュが儲かる仕事がないというだけのことで、長期的に考えると、東京の方がいつまで持続するか分からない。先ほど申し上げたように、地方の色々な人材もそうですし、物、サービスなどもそうですが、地方が基になって、東京という場が花開いているだけとも言えるので、東京だけでは自足できないと思います。

ですので、それの根っこを見たり、色々な人に出会ったりすると、本当に楽しいですし、やりがいもあります。それこそ福澤先生の教えですが、やはり各地方地方に志を持ち、根付いている優れた人材はいますので、その人たちがお互いを知ることによって刺激になると。そういうことなので、今回の受講生の皆さんが学ぶと同時に、我々にとっても学びの場だというふうに、本当に感じています。

一度は東京へ行ってみないと、「東京はどんなところなのだろう」と思いますよね。例えば日本から出ないという人に関しては、アメリカや中国やヨーロッパへ行ってみないと、どういうところか分からないじゃないですか。行ってみて初めて、「日本が一番いい」とそこで初めて分かってこそ、本当の良さが分かるといえるので。

それから時代的にも、今までは行きっぱなしの時代だったと言えると思うのです。子供の頃は地方にいて、大学から、あるいは就職から東京に出て、それで定年まで働いて疲れたら田舎が良かったなと思う。そういう人生なわけじゃないですか。
ただ今、そのリターンがだんだん早くなっていると思っています。大学を出て就職して、「やっぱり自分の生まれたところでも、同じようなことができるじゃないか」とか。今でいうワークライフバランスですけれども。あるいはその社会ということを考えたら、「東京で働くことの意味って何かあるかな?」というふうに考えると、私はやはり自分の生まれ故郷が東京以外のところにあれば、そこに帰ったほうが豊かな人生が送れると思っています。皆さんもそう思うと思うので、これからその流れは強まると思っています。

ですから、お金というのは本当にまさにお金で、キャッシュだけなのです。よく言うのですが、アメリカのハリウッドセレブでも、東京の六本木ヒルズのセレブでもいいですけれど、彼らが何億も稼いで何をしているかというと、有機栽培の野菜を一生懸命買って、アトピーになった子供に自然食品を与える。それで、高級スーパーに行ったりして、ものすごく高い値段を払ったり、都会のコンクリートジャングルで木が3本位立っているだけでも「このマンションは緑が多い」と言っている。

それは、東京以外に住めば自然に手に入ることで、例えば自分は役所で働いているとして、隣の人はなにか自営で働いている。あるいは建築士がいたり、地元の工務店が家を造ってくれたり。それで農家さんがいて、自然に交換して美味しいものがすぐ手に入るわけじゃないですか。確かに、給料という形の現金収入は少なくても、お金でみんな何を手に入れようとしているかというと、それは元々失ったものを取り返しているだけともいえる。それは非常に馬鹿馬鹿しいことなので多分みんな気付いてくると思いますし、もう今気付いている動きはあります。

ただ、確かにちょっとした現金は必要ですよね。その部分をどうするか、その意味ではバランスが取れてない部分があるかもしれません。どうしても現代に必要な現金という形で稼ぐものを、あとちょっとだけどうするかという問題だと思います。

ナレーション:
今回は鹿児島県内の若手経営者、企業の管理職、幹部候補者を中心におよそ40人が参加し4日間にわたって、慶應義塾大学ビジネス・スクールの5人の講師陣による講義が行われました。

岡田正大先生は戦略を担当。海外進出した企業の持続的競争優位の原点を議論するケースと、開発途上国への事業戦略と共有価値について、学びを深めました。

余田拓郎先生はマーケティングを担当。今回はマーケティングの基礎と競争環境下におけるマーケティングおよびブランド戦略について討議しました。

村上裕太郎先生は会計管理を担当。さまざまな業界の財務諸表の特徴や企業特有のビジネスモデルについて理解を深め、コンビニ業界における契約形態について議論しました。

齋藤卓爾先生は財務を担当。共存共栄する企業間の関係性について討議するとともに、投資戦略や政策における意思決定について考えました。

そして今回は、「鹿児島からアジア、世界を考える」という共通テーマが設けられました。

岩崎貴光 副理事長:
基本的には、理事長がそういうスローガンを掲げてほしいということで、慶應義塾大学ビジネス・スクールにお願いをしたという背景があります。その背景としては、そういう人材育成を通してアジアに立ち向かっていければという思いの一つだと思うのですけれども。やはりそのケースメソッドの中で取り上げるケースでは、大企業といえども日本国内で、もしくはグローバルで、グローバリゼーションという名の中で、どう苦労しているとか、こういう成功をしているとか、実はこういう壁があったとか。そういうケースも学べるので、そういうケースの内容からも、世界を相手にした日本でどういうような動きがあるのかということも勉強できます。そして鹿児島自身も、やはりアジア、そして世界に立ち向かっていく必要があるのではないか、という意味においては、このスローガンを掲げて非常に良かったなというふうに思っています。

来年は明治維新150周年ということで、もう150年前の話なので誰ももちろん生きている人はいないのですけれども。当時、実際に数多くの鹿児島の人間が日本に革命を起こした。鹿児島県にとっても、来年の明治維新150周年は振り返るために大事な年なのかなと思います。当時、恐らく参考書も教科書もそれこそケースというものも、たぶん存在していない中で、立派に改革を起こした鹿児島の方々が、どういう形で明治維新を起こしたのだろうと考えたときに、薩摩の「郷中教育」という教育の中身について考えます。色々な人間が色々なことを想定しながら、自分の思いを様々な形でたくさんの人と話し合って、何か一つを決めていったという郷中教育の流れと、今回の慶応ビジネス・スクールというのは非常に類似したものなのではないかと思っております。

そういう意味においては、現代の鹿児島には足りないところもあります。いろいろ頑張らないといけないところがたくさんあるので、ある種この慶應のこのスタイルの中で、皆さん一人一人が何かその価値を見出して、150周年を皮切りに鹿児島が何かアジアに発信できるような大きなことができればいいな、という一つの願いはあります。

岩崎芳太郎 理事長:
Assumptionというのは、“I assume ~”というように、いろいろ意見を言って、「~と、僕は思うんだよね」というような英語のニュアンスでして、いわばAssumptionというのは前提とか、仮定とかいうことです。その授業では最終的な結論を前提として、そのAssumption、すなわち前提条件がどういう前提条件でロジックが作り上げられたか、というのを推測する授業だそうです。
それで、僕はなぜこんなことをお話ししたかというと、私の持論ですけれども日本というのは非常に知識偏重型の偏差値教育、特に最近は同じ偏差値教育でも対策と傾向さえ勉強して過去問さえやれば、偏差値の高い大学に入れるように、日本の教育というのは、ゆがんでしまっています。

そういう意味で北欧の国など、極めて小さなうちからそのロジカルシンキングの訓練を受けている国の人たちより日本人は海外との色々なNegotiationや戦略的な戦いをしていくときに、本当に競争劣位にあると思っている中で、このビジネス・スクールも実は財団として、しているわけです。

こういう環境で毎日仕事をしていると、日本人は勝手なAssumptionでその結論だけを急いでしまう傾向があります。どちらかというと大切なのは、その結論を得るまでのプロセスと、前提のAssumptionの置き方でして、そこがなぜ大切かというと、人は逆にいえば、過ちを犯すものだからです。

それから、常に環境というのは変化していくものですから、常にAssumptionを置き換えながら、失敗したと思ってロジックを作り直すときにも最初の前提条件を理解していないと、その修正は利きません。

この国は明治150周年という意味では、1868年に中央集権官僚国家にはなったわけです。それ以来、色々な出来事があっても、この中央集権官僚国家という体制を日本はとっていて、その弊害として官僚制の致命的なニつの欠陥があります。お分かりになる方いらっしゃいますか?
一つが、合成の誤謬(ごびゅう)、もう一つが無謬性(むびゅうせい)ということです。無謬性というのは、役人というのは過ちはしないという発想です。官僚組織と付き合っていると、絶対に「間違っている」と言いません。
合成の誤謬というのは、基本的にいわゆる俯瞰(ふかん)とか鳥瞰(ちょうかん)という言葉がありますけれど、部分的にはロジックは正しくて、合理的なものを積み上げていっても、全体をよく見るとその部分的な合理性が全体の合理性にならないというのが、合成の誤謬と言うのです。

本日はずっとケーススタディーなど色々されたと思います。それは皆さんの仕事に具体的に役立つのですけれど、財団としてはやはり一番学んでほしいのは、そうやって毎日どうやって生きているかというときに、それこそ私的なことを自分がどのように判断するか。もしくは仕事をしているときの自分の行動・判断。そういうものの考え方、頭の使い方。その基本をこの3日間ですが、それらの基本を学んでいただければ、このビジネス・スクールをした甲斐があるのかな、というふうに思っております。

小幡績先生:
ビジネススクールをわざわざ鹿児島まで東京から来る理由というのは、一つはビジネススクールって大したことないんだ、ということを分かって欲しいからです。つまり、東京には何かあるんじゃないか、ビジネススクールという名前で、すごい秘密があるんじゃないかと思われていたかと思うのですけれども、何もないということを分かって欲しいということです。

コンプレックスを持たれているとは思いませんけれども、やはり都会は違うとか、アメリカから来たビジネススクールは何か違う特別なものだというのはでなくて、要は、単にビジネスをするということだけですので、そこに特別なものはないということです。

もう一つは、なぜビジネススクールをわざわざやる必要があるかというと、鹿児島にはいわゆるコンテンツ、本物の物はいっぱいあります。しかし「本物が素晴らしい」といくら言っても、ビジネスで利益になるには、やはりもうワンクッションあるということなので、それにはどうしたらいいかということを考えることが必要だということを分かって欲しいからです。それを考えなければ儲けは出てきません。ただ、逆にその儲けは特別なものから生まれるわけではなくて、いいモノを持っている、いいコンテンツがあるところでそれらを使ってどうしたら儲けられるかと考えることによって、初めて生まれるのです。
逆にいうと、ビジネススクールに儲ける素はなくて、コンテンツがないので、私たちは儲けを全く生み出せません。東京は地方で生まれたコンテンツが集まってきて、それをみんなが刈り取っているということですので。東京以外のところでコンテンツを生み出しているということなので、地方の役割はすごく大事なんだ、とそういうふうに自信を持ってもらいたい。ちょっと偉そうですけれども。

「地方」という言い方で、遅れているとか、色々な経済成長の利益を地方にも回せと言うのですけれども、回すも何も元はこっちなんです。ただ刈り取るとか、それを増やすという気がないため、あるいは何となくどうしていいか分からないために、それが儲けになっていないだけなので、それは、秘密はないから普通に誠実にやればいい。だけど、儲けるには儲けようとして、顧客からお金を払ってもらう必要があると。そこのプロセスが必要だということを分かって欲しいということです。

逆に、東京では「起業したい」という子たちがすごくいっぱいいて、なんというか今の世の中では起業が一番偉い、と。大企業のサラリーマンになりたがるのは駄目で、起業する人が一番偉いというような雰囲気がありますけれど、私は全然そう思っていません。東京で、起業したいという子に「何がしたいの」と聞くと、「起業したいんです」と答えたので、「起業って一体何をしたいの?」というと、「とにかく起業したい」と。それというのは自分の欲望、儲けだけなんです。

そうではなく、地方の場合は逆で、様々なビジネスを先祖代々やっていたり、あるいは、たまたま日常的にやっている日常生活の延長で仕事をしていたりします。それを一つ工夫して、別の形のビジネスをすることこそが、地に足の着いた本当の本物を含んだ企業だと思っていますので、その種は、むしろ地方にいっぱいある。これもビジネスと同じですけれど、今までよりプラスアルファで、今までとは別のもので儲けられるんだという発見をしてもらいたいですし、発見しようと思ってもらいたい。逆にいうと、それさえすれば、自然と生まれてくると思っています。

ナレーション:
受講された方に感想を伺いました。

A:
私自身、このような泊まり込みでの研修というか勉強会が初めてだったのですごく刺激になりましたし、周りの方も大変いろいろな業種の方々がいらして、すごく今回のこのセッションに熱意を注いでいらっしゃるので、「こんな熱い方々が集まる会なんだな」と思ってすごく勉強に、参考になっています。

B:
私は中国四川省出身で、初めて日本のビジネス・スクールの講座に参加させていただいています。仕事は今、香港の現地法人のディレクターとして頑張らせていただいているところです。普段仕事をしていながら、こういった講座を受けて普段自分がやっている仕事と理論的な勉強をぶつけ合ったときに、「なるほど」という気付きを今回ものすごく強く感じたところでもあります。

C:
内容は世界中でやっているビジネス・スクールのレベルと全く同じことを、この鹿児島でやっていただけました。大変勉強になりました。書かれている内容も結構ボリュームがありますし、いろいろと考えさせられている内容なのですけれど、別に長文読解ではないので、一つの正解があるというわけではないのですけれど、いろいろとその物事について深く考えるという習慣がつきました。

ナレーション:
また、今回は「鹿児島からアジア、そして世界へ向けた新しいビジネスプロジェクトを提案する」という課題も出され、最終日に各グループが発表しました。

<①グループ>

岩崎貴光 副理事長:
「鹿児島の魅力を世界に発信するプロジェクト」ということで、~波にたゆたうハイパーリゾート~。
事業ドメインの定義としては、海外にそういう豪華クルーズがあるので、鹿児島のキラーコンテンツになるような、そういうクルーズ船を目指しています。その発信をするということで、一応台湾人を一つのモデルとして、例えば年齢は50歳、社長夫人、女性でインスタグラムが好きな人、という感じで、年齢が割と高い方でもインスタグラムを好まれるので、そういった発信好きというか、自己顕示欲が高い人が来てくれれば、非常に私としてもありがたいと思っています。

このような人たちが来るためにはどうすればいいかということで、鹿児島からしたら鹿児島黒毛和牛というのが実は本物なのだということを大前提として、そのプロモートも兼ねて実際に鹿児島の本当のおいしい牛を食べていただくと。
インスタ映えするオシャレとしてイルカと泳げる。これはシーズンによりますけれど。桜島をプロジェクションマッピングするとか。こういうソフトウェアも。希少性が高いものにはお金に糸目をつけない方も結構多いので。

一応概算ですが、最後収支シミュレーションということで、一応30人ぐらい限定の船を想定しています。だいたい年間345日稼働ということで、ドック期間込みで一応考えているのですが、もちろんそのランニングコストやメンテナンスコストもありますけれど、だいたい10年ぐらいでペイできればいいかなというシミュレーションでいます。

D:
気象条件をどんな感じで考えていますでしょうか。

岩崎貴光 副理事長:
その気象条件も加味して、稼働日数を345、とちょっと高く振っています。

小幡績先生:
10年でペイするという割には引っ張り方がなんというか、すごく短期逃げ切り型ですよね。すごく宣伝して話題にして、ずっと話題沸騰で10年続くということは、恐らくないので。

岩崎貴光 副理事長:
展開していくということだけど、順繰り、順繰り、各国で回そうというようなのは・・・

<②グループ>

②グループ:
私たちが考えましたのは、「鹿児島にナイトスポットをつくる」ということでして、ターゲットとしては国内外の観光客の方です。で、アクティブシニアの方ですとか、インバウンドであれば、家族連れの方なども多いので、ファミリー層向け。それで、観光客の方だけが来るような施設ですと、またそれも観光客向けの方につくったソフトでしか対応できない。それでは本当の鹿児島を味わっていただけない、ということで地元の方もよく集うような場所にして、交流を図れるようなスポットにできればなというふうに考えています。

8Kを使って、鹿児島を上空から撮影した動画を見ていただいて、鹿児島全域、それこそ離島も含めて、鹿児島ならではの自然ですとか動植物、そして桜島といっても桜島をただ横から見るだけではなくて、火口のほうから、上からの俯瞰の画も見ていただいて。実際にできればですけれども、爆発するところのシーンも音と匂いも演出としてできればな、というふうに考えています。また、地元の美味しい食材を使って高級なディナーも楽しんでいただく。
売上の見込みとしましては約3億6,480万円です。そして空いた時間を利用したウエディング事業というところも、月に5組を受け入れるとしまして、年商は5億1,480万以上を見込んでおります。

齋藤卓爾先生:
派手なナイトスポットというのは、最初は少し当たるかもしれないけれど、継続的にこういうのを当てていくというのは、難しいと思うんです。そういう意味では、やはり一つの街として、「いろいろな名所がありますよ」という形になっていかないと、なかなかそこが魅力です、というところにいけないのかな、というふうには感じました。ありがとうございます。

小幡績先生:
齋藤先生がおっしゃったように、何かと一体にというか、元々ある背景に馴染んでいるというのが何か1つ欲しいかなと思います。

<③グループ>

③グループ:
表紙のほうに「鹿児島」を世界に、ということで、鹿児島を世界に発信していこうということで話し合いを行った内容になっております。鹿児島県産品は誇れるものがたくさんあります。牛であったり、焼酎であったり、お茶であったりと、たくさんの誇れるものがあるのだけれども、なぜか弾けない。ですので、私たちの新規事業計画としては、鹿児島県の総合プロモーション会社を設立しましょうということです。

アジア圏の日本語、日本語研究の学科のある大学のエリアに、鹿児島県産品の飲食を中心としたショップを開業する。それで将来活躍が期待される日本に関心のある学生に、鹿児島の認知度を高める。そうすることによって結果的に、鹿児島県産品がそれらの学生を通じて世界の方に発信されるのではないかと。エリアの中の学生たちに訴求をしつつ、信頼関係を構築していくと。

そしてその上で次なる事業展開として何をするかといいますと、日本語堪能な学生を日本企業へ紹介する、人材紹介事業をしようという形です。ここのポイントですけれども、優秀な学生を事前にこちら側でちゃんとノウハウを持ってセレクションをして、学生の質を高めるということをしておきます。人材紹介業に関しては、売上高想定は20人で年間6回はやって、2カ国で概ね約1億円の売上を目指す。

E:
初期投資としてショップ兼オフィスとありますが、倉庫などはどうするのですか。

③グループ:
商材をどの程度揃えて、その店舗の規模をどのくらいにするかということもあるかな、というふうに考えているところです。

齋藤卓爾先生:
ショップビジネスと人材派遣ビジネスをくっつけるというのは、非常に弱いつながりを負って、ものすごいリスクを負う。

F:
人材事業は、ものすごくチャンスがあると思っています。2割でも僕は安いかなと。もっと取ってもいいのではないかなと思っています。

<④グループ>

④グループ:
④グループは「大隅半島再興プロジェクト」ということで、ビジネスの内容を考えてきました。そこで我々が注目したのが豚です。ただ豚を売るというものではなくて、高級豚を生まれたての時点で販売する。そして、お客様自身で育てていただいて、愛着がたっぷりこもった豚さんを美味しくいただいてもらうと。

まず目的は、先ほど少し大きなことを書いておりますが、大隅半島の資源を活用したビジネスということです。こちらの立ち上げによって、大隅半島の経済を活性化したいというものです。
ターゲットは少し変わった趣味の裕福な方に訴求ができないかと思っております。

コンセプトは高級豚にさらに付加価値を付けて販売するというものです。
まず、生後2カ月の時点で販売する。そして育成過程に顧客が関与するというものです。生育過程の様子を携帯で視聴可能にして、豪奢な豚舎・設備を利用して育てるというプロセス。そして、飼料の種類やその配合の比率などをお客様に選択してもらうというものです。

それでこの豚を育てる外国人労働者を技能研修生として安く雇用し、その監視役として国内労働者。こちらもスローライフ志向の都会で働いたリタイヤ組なんかを呼んでくることで、まずは過疎化対策。そしてこの豚さんの排便を使って、エネルギー植物を育てていきたいと思っております。これが豚の育成と併せて休眠地の活用に資するものと考えておりまして、ここでできあがったエネルギーを豚舎の設備に回すということで、一応再生エネルギーを活用しているといったところを、一つポイントとして設けております。

事業プランですけれども、まず豚の売買事業としては、仕入れ価格4万円の販売価格80万円を予定しております。目標の売上は5,000頭の年間40億です。

G:
愛着たっぷりな豚は、食べられるものですか。

H:
same questionです。

④グループ:
検討を色々しておりますけれども、違約金を一部負担いただいてEXITしてもらって、我々が普通に販売するということも考えています。

I:
これは1頭1頭が、豚舎というか部屋が与えられると考えているのですか。

④グループ:
1頭1部屋のイメージはしております。

I:
5,000頭ということは、かなりの・・・

④グループ:
広大な大隅半島を有効に活用したいと・・・

<⑤グループ>

⑤グループ:
われわれのプランは、「Amami Yakushima 世界自然遺産&鹿児島体験クルーズ」というものになっています。まず、鹿児島のニつの世界自然遺産。これを自然、文化、食に分けて日本国内外に発信。そして自然をフックにした豪華クルーズを通し、鹿児島食の拡大を図ります。

具体的な案を紹介していきます。旅行日程としましては4泊5日です。
1日目に鹿児島を出発して屋久島へ向かう。2日目です。屋久島に着いて縄文杉トレッキング。縄文杉ルートもしくは白谷雲水峡ルート。そして屋久島を出ます。その日も船中泊で、いわさき・黒毛和牛ナイト等々です。船内にはたくさんの面白みが詰まっております。
そして奄美に入っていきます。3日目は奄美ピクニック。スキューバかグラスボート、そして自然を楽しむと。もしくはマングローブ散策です。こういうふうに楽しんでいただいて、奄美を出ると。
そのまま台湾に向かって、日本人観光客には降りてもらって、台湾人と入れ替えということで、そのまま船に乗ってもらいます。このプランも4泊5日で考えております。
収益性の検証についてですが、人数としましては350名と計上して、総売上は7,000万円。そして、台湾人向けプランですが、総売上が変わってきます。8,750万円、プラス補助金を考えておりまして、収益がこちらは1,075万円となっております。

J:
なかなか普通のサラリーマンは仕事を休めない。土日と合わせて、取れても3日間ぐらいですね。

⑤グループ:
日本人と比べて、海外の方は連休をまとめて取るみたいです。ですので、今回それも織り込ませてもらって、4泊5日というふうにセッティングさせていただきました。

K:
募集人数は350名で設定しており、帰りは飛行機に乗って帰るということなのですけれど。例えば鹿児島から台湾に戻るときに、そもそも鹿児島、地方空港の便はその350人を乗せられない。

小幡績先生:それであれば最初から飛行機をチャーターしたほうが安く上がるのではないか。まとめて帰そうと思ったら。そんな既存路線には乗らずに。

<⑥グループ>

⑥グループ:
「Tanegashima Rocket Island Project」と。目的は、鹿児島・種子島の知名度アップとなっております。ターゲットは裕福で教育水準の高い世界中のホワイトカラー。コンセプトとしては、宇宙に一番近い島「種子島」に、夢のロケット旅行でカジノを満喫していただくという内容になっています。
SpaceX社のほうで地球上の主要都市を30分で結ぶロケットが計画されているということで、今回うちのほうではこれにいち早く便乗して、このロケットの発着所の港として、種子島のほうにこれを誘致すると。それに加えて、カジノの誘致をします。また、コンベンション施設とビーチリゾートを備えた、観光なのか経済なのか、この特区を整備して、世界中の富裕層をターゲットにております。
先ほどターゲットはセレブ層と申し上げましたが、将来エコノミー料金でロケットに乗れることを加味すれば、一概に富裕層とひとくくりするのではなくて、セレブに憧れたり、セレブを目指す層までターゲットにできるのではないかと考えております。

初期投資は大きく4つございます。1つ目はロケットターミナルビル。これが1兆円から2兆円となっておりますが、成田空港を元に参考で出してあります。2つ目がカジノに1兆円。こちらはアメリカのベネチアンを参考に出してあります。3つ目がビーチリゾート85億円。こちらは沖縄マリオットリゾートかりゆしビーチを参考にしてあります。
そして主な収支ですが、まずロケット空港のところですが、こちらは東京国際空港の収入と費用を参考にしてございます。カジノは先ほど申し上げましたアメリカのベネチアンの収支を参考にして出してあります。年間で合計収支3,400億円の利益を一応出す予定でございます。

L:
どういうファイナンスをされますか。

⑥グループ:
種子島すこやかファンドというファンドを立ち上げてやろうかと思っております。

M:
別に大都会の横でもロケットが打てるのかな、と発射できるのかなと思って。そうなったときに立地として種子島を選定されるのかと、ちょっと不安がありました。

⑥グループ:
そうなんです。そのとおりで、まず種子島を選んでいるのは、鹿児島のリソースとして、ロケットといえば、種子島、というような、今日本でも代表するところだと思います。
その知名度を生かして、いち早く手を挙げて種子島でやると。

小幡績先生:
本当に皆さん、4日間お付き合いいただきありがとうございました。なんというか、楽しみにしつつ不安でもありました。昨年の第1回の始まりのときにも言いましたけれど、私自身も思い入れがありましたし、ぜひいいものにしたいと思いまして。そういうことで最初1期目も参加者の人選をしていただきました。2期目はより若返りを図り、さらにパワーアップしていただきつつ、リピーターもいらっしゃるということで、最高の布陣でやっていただきました。
私はちょっと心ならずも、昨年は日程を全うできなかったので、今年こそということで来ました。とりあえず何よりも、毎年続けるということが非常に、私としても2回目、リピートしてもらえるということは良かったと思っています。

何より大事なのが、鹿児島にこの慶應義塾大学ビジネス・スクールin霧島だったり指宿だったりしますけれど、このプログラムの卒業生を積み重ねていくということが、非常に私にとっても喜びですし、皆さんにとってもいいことだと思うので、ここで横のネットワークができて1期生、2期生、3期生、4期生・・・。鹿児島にいる重要人物は、みんなここの卒業生だと。それにまた何度でも帰ってきていただいて、1期生と5期生が議論したり、プロジェクトで実現したプロジェクトを中心にまたディスカッションしてみたりとか。そういうのを夢じゃなくて目標にしてやっています。それで、私のその期待に違わぬ参加者メンバーに恵まれ、もう実現できるなと思うことができ、岩崎さんにも非常に感謝しています。皆さん熱心に参加していただいて本当にありがとうございました。これからも仲良く厳しく、ずっと一生つき合っていけたらと思います。本当にありがとうございました。</div>