平成22年度第3回第2部:~九州の人的資・・・~

岩崎育英奨学会 政経マネジメント塾
岩崎育英奨学会 政経マネジメント塾 平成22年度シリーズ

第3回第2部:『格差の負のスパイラルからの脱却』
~九州の人的資源の劣位及び人材育成基盤の欠如について、
中央と九州の格差の観点からそれをどう是正するか~

対談
原口一博先生(衆議院議員)×岩崎芳太郎塾長
開催日時
平成23年2月12日(土)13:30~14:15
場所
西鉄グランドホテル「鳳凰の間」(福岡市中央区大名2-6-60)

原口 一博(Kazuhiro Haraguchi)

東京大学文学部心理学科卒業。
(財)松下政経塾第4期生として入塾。
1987年、28歳で佐賀県議会議員初当選、
1996年、衆議院議員初当選。
衆議院財務金融委員会民主党筆頭理事、衆議院郵政民営化に関する特別委員会民主党理事、総務大臣、内閣府特命担当大臣(地域主権推進担当)を歴任。

講義内容

対談:

岩崎:
それでは、先生、よろしくお願いします。

原口:
よろしくお願いします。

岩崎:
時間が短くて、言いたいことの60%ぐらいしかお話しできなかったかもしれませんので、残り30分ぐらいになりましたけど、その中で言い足りなかったことをおっしゃってください。

もうさっそくですので、まず私も個人的にも興味があるのですけど、先生は松下政経塾の4期生で、松下幸之助さんというとても偉いというか、私も尊敬する方と直接接せられたこともあるということでお聞きしていますので、なぜ松下政経塾に入られたのかとか、松下政経塾で何を学ばれたのかとか、そういうことをちょっとお聞かせ願えればと思います。

原口:
もともと心理学と社会学と法学を学んでいまして、私の友人がインドから来ていたのですが、彼が政治家になると言いました。私はもう小学校6年のときがロッキード事件、政治家というのは悪いことをする人間、ブルドッグみたいな顔をして、油を食べて毒を売る人間だっていうふうに思い込んでいました。私、彼にそう言いました。「政治家なんてろくでもない者がやるんだ」と言いました。岩崎社長、僕らはちょうどそのとき学校に子どもたちを戻すことをやっていたのです。そしたら彼はこう言いました。「インドは3,000にも及ぶカーストがあって、それを自分は変えようと思う。日本はあなた方、そうやって言いますけども、政治家の半分は二世、三世じゃないか。そして子どもの心の中にまで政治のちりやあくたが落ち込んでいる。子どもも長いものに巻かれろ、悪いことしても見つからなければいいじゃないか。日本はそういう精神性になっているじゃないか。自分が帰って政治家になるっていうのはおかしいというのは、君たちのほうがおかしい」。ちょうどもうあれは30年ぐらい前ですけども、「30年後にはインドが日本を抜いてやる」と言って帰ったのです。

それが私が松下さんに出会う、もともと政治を変えたいという志があったのですが、そこで松下さんの試験を受けます。試験を受けるといっても、一次試験、二次試験、三次試験、全部体力テストなのです。それで松下さんは、その人間の運と愛きょうが分かるんだとか、どんな基準で選んだかよく分かりません。後でそれこそ九州一円の暴走族のリーダーだったとか、もうとてもじゃない、何でこの人がというのが選ばれていたので聞いたのですけども、白紙の人間を政治の常識を常識としません。今の政治家をいろいろ組み立ててみても、かえってそれだと改革が遅くなります。政治の常識をゼロから変えられるような人材を集めたのだということです。

もうこれでおしまいにしますが、松下さんは一言で言うとプラグのような人です。車のプラグはパッという火花が出ますが、彼と話をしますと、私たちでも何かできるのではないか、自分たちの天命が分かるのではないかということです。政経塾で学んだことは何かといいますと、志を鍛えるということであります。

岩崎:
ありがとうございました。では、次の質問と言いますか、与党でいらっしゃいますけど、今は閣外にあられまして、一応与党であるという意味では、日本国の経営をする側にいらっしゃるわけですが、それこそ松下幸之助さんというのは経営の神様というふうに言われた方でもありますので、そういう意味ではいろいろ微妙なお立場もおありかと思いますけど、経営の側にいるお人として、今の日本の経営のあり方に関して、簡単でいいですから、何かちょっとお話をお願いします。

原口:
ちょうど歴史でいうと明治維新が終わった後、みんなが得手勝手なことを言って幕藩体制が維新政府の中に入ってきて、混乱をしている時代だというふうに思っています。それを収めたのが大久保利通公です。私たちは、そこへ向かわなければいけません。つまり統治のリーダーをこれからつくらなければいけません。今までは分断の、何か目先に敵を置いて、そしてさっき財政のとこで言いましたけども、かつての人たちがやってきた古い政治手法を一部採り入れたかのように見えます。

私は去年9月暴れすぎて、人によっては座しきろうに入れられているという人がいますが、決して座しきろうに入っているわけではなくて、本当の国民の皆さんが、私たちになぜ政権交代をしろと言われたのでしょうか。それは税金の無駄食いをなくして、今の中央集権体制、この体制を変えるということです。ですから、この間も名古屋のトリプル選挙で、毎晩のように来て下さい、来て下さいと電話がありましたけど、結局僕らは行けませんでした。仲間を応援せずに、全然違う人たちがまだ入ってきています。まだ混乱の時期です。この混乱の時期を早く収めなければいけないと考えています。

岩崎:
私なりに今先生のおっしゃることを解釈したのは、既存の政治システムなり、既存の社会システムをまず壊すある時代がありまして、今はそれから何かつくっていく時代ですけど、まだいまいち混とんから脱しきれないというふうにおっしゃっているように受け取れたのですけど、私も2年前に『地方を殺すのは誰か』という本を書きまして、それはやはり私は鹿児島でバス会社等をいろいろ経営する中で、もう典型的な負け組企業の経営者として、死ぬほど苦労する中で、固有の経営努力では克服できない日本の社会システムの変化の不公正さをすごく痛感したもので、本を書いた経緯がございました。

その中で、今先生もおっしゃったように、中央集権官僚制度、それからもう1つが、中央大企業重点主義的な製造業を主体とする輸出立国政策です。確かに日本が戦争が終わってぼろぼろになった中で、この2つの制度が諸外国に比べて最大のパフォーマンスを得て、日本がナンバーワンになったことは間違いないですけど、先ほど先生がおっしゃったように、ヨーロッパ、アメリカ連合軍で、すぐ日本が勝つとルールを変えられるということです。一番典型的なのがやっぱり産業の米である金融というところのルールを変えられたがゆえに、日本というのはおかしくなっていったという意味では、この2つの制度、勝ち組の制度が逆に言えば日本が負けている理由ではないかなという思いを、私なりに地方目線で訴えたこの本なのです。

そういう意味では、総務大臣というのは、地方を所管する大臣でもありますし、そういう目線で、これもヘビーな問題ですので、簡単に地方再生のあり方に関しまして、何か一言いただければと思います。

原口:
まったく同じ認識を持っています。金融に近ければ近いほど、ニューヨークに近ければ近いほど価値が高いという状況がずっと世界で起きてきました。2005年にニューヨーク連銀で、今アメリカの財務長官をしているティモシー・ガイトナーさんとこんな話をしました。それは「エンデの遺言」という話です。エンデというのはドイツの童話作家、ミヒャエル・エンデなのですが、彼はお金を腐らせなければいけません。結局戦争が起きる、格差が起きるというのは何かといいますと、1929年はちょうどこれぐらいの価値のものを、この部屋全体ってみんなが間違ったわけです。2008年のリーマンショックもそうです。サブプライムローン、本当はローンをヘッジできないものをバンバンバンバン広げていきました。だから資本主義社会においても、ちょうどタヌキの葉っぱが土に帰るのと同じように、お金をどこかで減価させる、リデュースさせる、土に帰す、そういうシステムをつくらなければいけないというのをティモシー・ガイトナーさんと2005年に話しました。

結果、彼らもサブプライムローンをコントロールできなかったわけです。こういうことが起きると何が起きるのでしょうか。貧富の格差と紛争の極大化が生まれるのです。それを私たちは、この政権になって、緑の分権改革ということで記号を変えようとしているのです。それはスマートグリッドとエネルギーです。エネルギーは、今、岩崎社長がおっしゃったように、例えば、エジプト、ナイル川をコントロールできた人間がファラオと言われました。太陽の光を固定化できます。固定化という言葉が難しければ、僕らが、人間が使えるようにできるというのは植物だけです。だから植物を治山治水で大量にコントロールできた人間が権力者なのです。集中的に大規模に独占的に排除的に、これを中国でやった人が皇帝と言われました。日本では、鹿児島何万石ですか。77万、すごいですよ。もうそこだけで当時は、それこそ薩摩藩という強いものを、77万石のあの77という数字は、エネルギーのコントロールができる量を示していたわけです。このパラダイムが変わるのが、ちょうど浦賀にペリーが来たときです。あれは何かといいますと、地下のエネルギーを取り出した人たちが、地上のエネルギーを使っている人たちに対する挑戦です。エネルギーのタイムカプセルを使った人たちが勝つに決まっているのです。しかし、パラダイムは変わらないのです。大規模に集中的に独占的に排他的に、これを変えるのが緑の分権改革です。

例えば、社長、ヨーロッパでも500人とか1,000人でも豊かなまちっていくらでもあるではないですか。江戸時代は、鹿児島とか新潟が一番豊かなのです。なぜでしょうか。命を育むものをつくっているところが一番豊かなのです。これができるためには、1人2キロワットのきれいなエネルギーに高い価値を持たせます。これ固定価格の買取制度、もう今法律が動いています。そうすると何が生まれるでしょうか。今私たちは、21兆円、外に対してエネルギー代を払っています。それを例えば、そのうちの5兆円がこの九州を回ったと考えてみてください。私たちの地域、外に払われるのではなくて、私たちの地域を、地域通貨や地域を育む社会のお金で回ったと考えてみてください。今の記号が変わるのです。これを創富力と言っています。もうこれは、いろいろなところで起きています。私の佐賀県は太陽光が日本一なのです。スマートグリッドと組み合わせることによって、地域に今お金がいくシステムが変わります。私はその先頭にこの塾がなっていただけるように期待しています。

岩崎:
私は、そういう意味では最近だいぶ生意気ですけど達観しまして、中央集権けしからんとか、地方切り捨てけしからんと言ってもあんまり生産的ではありません。でも歴然として富の偏在とか、資本の偏在、それから今回のテーマである人材の偏在という現実をどうすればいいかというときには、やはり人の偏在から、これはすごく時間がかかることですけど、ここから始めなければ話にならないということです。

やはり長い目で見ますと、結局そこをやった人間が、信じられないぐらい立場を逆転できたというのが人類の歴史ではないかなというふうに思います。そういう意味では、先生にお言葉ですけど、ずっと先ほどのお話の中で、例えばICTとかそういうインフラ整備をしたときに、実際それを活用できる人材が地方にいませんと、いくら先生がブロードバンドを整備されても、という意味においては、やはり最後は人ではないのかと思います。例えばそれに関して政経塾にいらっしゃったこともひっくるめて、教育、人材育成に関して何かありますでしょうか。

原口:
だからこそもう小学校のころから、わざわざICTを学ばなくていいように未来の学校をつくるわけです。未来の学校は、例えばシンガポールでも一番中央から遠い所からやるのです。それは人材をそこから起こそうとするからです。

私も今回いろいろな地域を回ってみて、もうそれは起きていますね。例えば今からやはり一番厳しくなって危機的だと思っているのは東京なのです。東京はコストが高いです。今の現状、コストが高くて少子高齢化がものすごく進みますから、何が起きているかというと必要なインフラがどんどんどんどん壊れています。消防庁を所管していましたけども、皆さん東京に行かれますと、火事でもないのに消防自動車が出ているのを見たことありませんか。消防自動車が出ているのです。あれは何かといいますと、人口が多すぎて、それで救急車が足りないのです。だから白い救急車の代わりに、赤い消防自動車が先に、これ赤白連携と言っています。活力を失ったまちで、高コストで高齢化をすると一番厳しいのです。だから今、九州に帰ってこようという動きがいろいろなところで出ているのも、いや、だからいいのではないのですよ。東京を再生させなければいけませんけれども、地域にまた新たなチャンスがきているということも事実だと思います。

岩崎:
想定していなかった質問なのですけど、そういう意味では先生がおっしゃるように、今若い方、子どもをひっくるめて、この辺に関して早めにそういう情報インフラを整備して、極めてインタラクティブな形でのいろいろな人間とのコミュニケーションができるというような状況をつくることが、現状の地方のハンディをリカバーするというお考えすごく賛同するのです。

例えば、先生と違って私はiPadを使えないわけですね。私の息子や娘は、フェイスブックドッグフェースとかでテレビ会議で、離れている友達と交信をします。iPhoneも私今持っていませんので、そういう意味では、地方でいくと少し高齢者が多いみたいな、一昔前でいく、インフラ整備をする中で、利用者としての高齢者のデジタルディバイドみたいなところに関しては、何か先生お考えをお持ちですか。

原口:
ディバイドが生まれているということは何が悪いかといいますと、機械のほうが悪いのです。それは、国民が悪いのでは全然ないのです。例えば、スタートレックのああいうコンピューターがあったら誰だって苦労しないのです。今まだ入力とかに苦労しているということは、まだこっち側が悪いのです。

ですからそれは、ちょっと今日は時間がなくて皆さんのお手元にはお配りしていますが、脳情報通信の融合研究というのを今やっていまして、急速にそういう、こっちが苦労しなくても、機械側が苦労してくれるという環境を整えつつあります。知らないうちにもうコンピューターというのは横にあるわけで、特に今度の光の道3法案では何をやるかといいますと、遠隔医療や遠隔相談ができるためには規制がいっぱいあるのです。これを一括で取っ払うための法律です。それから電波もそうですね。日本の電波は、高速道路の中にリヤカーの道とか、自転車道とかがいっぱいあったのです。それを全部今回よけて、きれいな高速道路にして、そして国民にお渡しすると。まだやっぱり政治の側の努力の話です。国民の側は、そんなものに努力するよりも、お互いがお互いを支える、お互いがお互いを励まし合う、そっちに力を入れたほうがよほど生産的だと思います。
岩崎:
分かりました。ちょっと話題が変わりますけど、私は先ほどの本の中でも書いているのですけど、地方分権論者ではないのですね。いわゆる分権というのは誰かから権利を与えられます。でもこの国は、日本国憲法ではもともと私が主権を持っていますので、そういう意味では民主党は地域主権ですけど、私は地方主権論者でございます。

この地方主権論的な意味での人材育成を考えた場合に、先ほど先生もちょっと触れられましたけど、私、廃県置藩論者でもあるのです。明治維新というのが、人材的にどうしてなったかというのを私的に論じますと、やはり明治維新にかかわった人材というのは、各藩、自分の藩を自助自立させるための人材育成のための藩校を持っていました。また、私塾、松下村塾とか、いろいろな有名な塾以外にもいろいろな塾が多分あったと思うのですよね。それは寺子屋レベルからどんどんどんどん高度な教育館になったものもあるでしょう。

そういう意味では、やはり今先ほど私あいさつの中でも申し上げましたけど、戦後何十年間は、なんか地方のためにとか、そういうとなんかエゴイスティックな話で、根性が非常に狭い人間のように言われて、どうしてもなんかきれいごとでも日本のためにとか、国家のためにとお題目を付けなければやっぱり理解が得られないみたいな時代から、私はもう逆に地方のためにということが、最終的には日本のためにとなるような時代というか、そういうふうにロジックを変えていかなければいけないと思います。

そういうように考えたときに、胸を張ってそれを言い切れるのは、今申し上げたように、明治維新というのは、各藩が藩のために人材育成をした、私塾というそれなりの指導者が、自分の思想とか自分の考えを広げるために塾を開きました。その人たちが結果的には、やはり最後はこの国のために働いていったという意味では、決して地方のための人材育成が大局観がないわけではありません。

逆に今この国に一番欠落しているのは、例えば自立自助の心ですし、その原点であるのはやっぱり自尊心ですよね。そういう意味では、そういう地方という地域というユニットの中での人材育成というほうが、今からの時代は重要ではないかと思います。

その中で、ざっと見ますとやっぱり九州というのは独特で、非常にどの地域もどの県も自尊心の塊のような地域ばかりですから、逆に言えば、まずは九州というところが自尊自助自立の中で、九州の人材育成みたいなのを始める風土というのは非常にあるような気がするのですけど、どうでしょうか。

原口:
おっしゃるとおりだと思いますね。この間、私、尖閣まで飛んで行きました。ところが、尖閣で、石垣へ行って、今、日本で2番目ぐらいに厳しい所ですけども、石垣島の漁家の方々が、尖閣まで船を出そうと思っても、油代が高くて4時間半ぐらいで行けるところが7時間とか8時間、つまりゆっくり行かないといけません。これでは領土どころの話ではないのです。もし石垣島、これは社長もあの辺に土地を持っておられるだろうからあれですけど、経度が15度違います。だからもし時差特区、時差をあそこに認めたら、ちょうど東京から15度違うということは、1時間時差があるのですよ。時差の特区をあそこで自分たちが勝ち取ることができましたら金融特区もできるのです。要するに、為替のリスクをヘッジしなくて、石垣や沖縄、奄美でいろいろなことができます。1つはそういうことだと思うのです。

地域がお互い中央にある財源をよこせという時代はもうなくなります。だからよく地域主権改革をやりましたら、自分の地域がどう良くなりますかと問いを聞かれます。答えはあなた次第です。あなたが変なリーダーを選べばもっと悪くなります。だって自分でデザインできるわけです。自分で自分たちを計画します。

今、社長がおっしゃったことでとても大事なのは、地域の誇り、歴史に対する誇りです。例えば、ロシアの例を挙げるとあれですけど、彼らはナポレオンにこてんぱんに負けるまでは、歴史を非常に軽視したと言われています。サンクトペテルブルグの立派な歴史資料館があるのは、あれはナポレオンに負けてからなのです。自分たちの国を守るためには、自分たちの国の歴史や、誇りや、あるいは成り立ちを知らなければ、国さえ守れません。国を守るためには歴史が一番大事だというふうにロシア人は反省したということを、モスクワの友人が僕に言ってくれました。そこだと思うのです。歴史を学びます。

今、九州にはいろいろな、例えば、私の佐賀には鳳雛塾という塾があります。これはハーバードビジネススクールの佐賀版です。幸之助さんとか、カーネギーに会うことはできなくても、地域のカーネギーに出会って、そして地域の経営を自分たちでやっていきましょう、こういう動きがいろいろなところで広がってきました。楽しみです。

岩崎:
時間もなくなってきたのですけど、ちょっともう1つだけお聞きしたかったのですけど、今、歴史の話が出ましたけど、1つは自尊心というか、やっぱり一人一人の個の原点としての歴史の勉強というのは大切だと思います。

もう1つは、先ほど先生おっしゃっていたように、私、やはり今の偏差値教育の一番の問題点は、できない問題にあたらないと。それで今のペーパーテストで高い点を取るためには、過去問だけやればいいです。テストに正解がない問題は出されないわけですから、ということでいけば、結局今優秀だと言われている人は、テストの点の取り方が高いだけの話でして、本当に有能なのかどうなのかは、私は疑問を呈しています。

特に今の日本が、もしくは今の地域は、正解のない難問に取り組んで、それなりの正解を見いだしていかなければいけないという意味では、過去問に強い人間よりは、演えき的なアプローチを、ロジックを積み上げていって、この選択肢が最も多分ベストだろうということで、正解か、正解でないかは分かりませんけど、何かを選んでいかなければいけません。その能力にたけた人間を選ぶといったときに、偉そうなことを言いますと、やはり歴史というのは人類の歴史を演えき的に学ぶことによって、温故知新ではないですけど、難問に対する正解でないかと思われるある結論を見いだすためには、やはり歴史を学んだ人間ではないとできないというのが私の持論ですけど、ちょっと私の持論をひけらかせて何かというのは、ずうずうしいですけど、何かおっしゃっていただければと思います。

原口:
本当おっしゃるとおりですね。日本が危機に陥るときもさっきお話をしましたけども、日本が危機に陥るときってどういうときかってパターンがあるのですよ。和の精神を忘れて排他的になったりするときに、一番日本は内に閉じます。だから、今おっしゃるように、過去の偏差値教育の上手な人たちを連れて来て、それで過去山ほど失敗しているのですけども、真ん真ん中に置くと大体失敗するわけです。どこの内閣のことを言っているわけではないのですけれども、それをやっては駄目なのです。形が見えない、夢や、あるいは希望や理想を形にするから経営なのです。

旭化成の宮崎の社長をされた方が、こうおっしゃっていましたね。「夢を形にするのが経営であって、過去やれたことを今もやるんであればそれは経営ではない」。私たちは、新たな海図のない未来に今船出をしようとしています。その船出をしようとしているときに、つくるべき価値は何なのでしょうか。私は平和創造国家であり、そしてみんなが人間の安全保障で、世界を平和に、豊かに、お互いが協力をし、恐れを取り除くことだと思います。それは日本はものすごくたけているのです。そのためにも、さっき財政再建で言いましたけども、あれも今二次関数を解こうとしているのです。目先の増税をしようとしています。かえって財政赤字は拡大します。そういう歴史を踏まえていれば失敗することは絶対にないです。是非いい人材をたくさん輩出してください。

岩崎:
先ほどおっしゃったできない病と先生が使われているのですけど、できない病に感染しない人間をやっぱりつくることが重要ではないのかなというふうに感じた次第です。

いろいろ論じてきたのですけど、ちょっと私は失敗しまして、今日のこの講座のテーマをあまりにも大上段に振りかぶり過ぎまして、今さらながらこれ見ていて、このテーマでこれが終わったら、何かあまりにもギャップがあるかなという意味においては、ちょっとそれに言及して、決してお話がそのテーマの全部を語るものにはならなくても、少しだけテーマで掲げていますので。そうは言いましても、やはり現実は人材の育成機関とか、啓もう的な、もしくは指導的な立場にある有為な先生方も、やはり中央集権的に東京にいます。例えば、マネジメント一つにとっても、ビジネススクールみたいなものは地方にはございませんので、やはりハンディを地方では背負っています。

先ほどあいさつでも申し上げたように、いまだに有為な人材はいい大学に、いくら偏差値教育を否定しても、いい大学に行っていい大企業に就職するという意味では、地方はやはり人材の原材料の供給源でありまして、Jターン、Iターン、Uターン組が少しはいますけど、やはりバランスシートは明らかに輸出超過という現状の中で、戻って来ている人たち、もしくは出て行かなった人たちを、ツーステップ、スリーステップレベルアップするためのインフラの整備とか、そういうことを、これも私としては決して愚痴みたいなことではなくて、この辺をどうしていったらいいのかというのは、結局この問題に突き当たります。

そういう意味では政治家でいらっしゃって、しかも九州出身の政治家であられますので、もちろん国会議員というのは国のためにいろいろされるというのは百も承知ですけど、その中でさっきからずっと申し上げているように、地方のためにというのが、国のためにつながるという大テーゼの中で、地方の人材育成のハンディをどうやって解消していったらいいのか、ちょっとお話を聞かせてください。

原口:
答えは2つだと思います。1つは、自分たちの決めるべきことを人に決めさせないことです。やっぱりルールを中央で決めるのであれば、それは中央に行きます。いろいろな規制のルール、何とかのルール、ほとんど今まで中央に決めさせているのです。これのやり方を根本から変えようというのが僕らの地域主権改革です。自らのルールは、自らで決めるのだということです。

それからもう1つは、やっぱり真・善・美、大きな志に小さいころから触れることです。それは世界の最高の教育でしょうか。いや、もっと言いますと、その地域にあるものです。私は九州大学を出た数学の先生が、数学のノーベル賞候補の方でしたけど、佐賀の人でした。彼は、私もう数字見るたびにじんましんが出ていたのです。あるとき、佐賀の詩人の詩と、中原中也さんの詩を数学のテストの端っこに置いてくれまして、ふと気付いたのですね。佐賀出身のその詩人の詩と、数式のリズムって同じなのです。その美しさ。美しさに気付けば、もうそこで勝負ありなのです。数学の美しさに気付いた人間は、絶対数学から離れられません。

ですから私は、世界の中でいろいろな活動をする人たちがいますけども、食べ物がおいしくて、自然が豊かで、そしてゲマインシャフトというか、人と人とのつながりが温かい地域というのは、そこが一番強い地域だと思うのです。

あとは何かといいますと、情報のある意味、偏在があってそのために私も何とか大学というところに行ってみて、あそこ行った人は天才だろうと思っていたのですよ。でも、よくよく考えたら私が佐賀の高校で勉強するのは、このテーブル全体です。あそこに来ている人たちは、これぐらいを勉強している人たちだったのです。そこでいわゆる勝負が決まっていました。単なる情報の格差の話なのです。この格差を埋めるために僕らは、新たな制度を今回用意をしています。それが新しい公共です。

新しい公共とは何かといいますと、これは税の市民化なのです。今までは中央にお金を集めて、それを官僚の差配によって、それから口きき政治家の差配によって税の使い道を決めるというやつです。それを自由化したのです。私が例えば2万円、岩崎財団に寄付をしましたら5,000円は控除できます。市民公益、公益の市民化なのです。

京都に「ゆめカフェ」という、生きづらさ、働きづらさを感じている女性の人たちがつくっているNPOがあります。これを中央の官僚で何とか計画、働く女性のつらさを何とか変えましょうねと、何とか計画って基本計画をつくって、何とか予算ってやったら3,000億円かかります。しかし、NPOの市民公益で、NPOにみんなが自由にそれを支えるしくみをつくれば、アメリカはGDPの17%がNPOです。この自由化、これが地方に、この九州に、一番チャンスなのです。佐賀もそうですけど、この九州には布施という歴史の風土がありますね。そういったものをしっかり生かしていくチャンスがきているなと思います。

岩崎:
先生のほうに5分延ばしていただきましたので、15分までを20分までということで、もう時間があと数分しかなくなったのですが、質問を受け付けようと思ったのですけど、そういう意味で時間もありませんので、最後、先生のほうから言い足りなかったことがありましたら、3分なり2分なりで。

原口:
やはりご縁だなと思います。こういういいご縁に出会えた人は、その縁を周りに広げていただきたいです。共有することで生まれるもの、出会うことで生まれるもの、みんなが下を向いているときに、みんなが非常に暗いメッセージを出す必要はまったくないです。岩崎さんが、もう本当に、私も本を読ませていただいて、今まで調べさせていただきました。理不尽なものとずっと闘ってこられました。

立法が弱くて、行政だけでかいと何が起きるか、国民が置いてきぼりになります。司法が弱くて、行政だけでかいと何が起きるか、国民が泣き寝入りするのです。それと闘ってきた人、闘う相手と、闘う場所と、大義、志、これがやっぱり一番大事だなと思います。是非このビジネス塾で、志を鍛えて、そしてネットワークをつくることによって、地域の光を皆さんでつくっていただけたら幸いです。僕も頑張ります。

岩崎:
ありがとうございました。九州地方知事会と、九経連が主催します九州戦略会議で、5年前にやはり九州で何かしなければいけないということで、一番はじめに始まったのが九州観光推進機構という組織でございまして、今九州を一つとして、特にアジアからのインバウンド等で九州は一丸となって観光振興を始めました。九経連の協賛をいただきまして、松尾会長になりまして、九経連も地域委員会ということで、各県で九経連がいろいろ催し、会合を開き始めました。

九経連のテーマは、九州は一つというテーマだったのですけど、あえて申し上げれば10年ぐらい前は、裏で九州は一つずつみたいな、ちょっと陰口めいた話もありまして、でも世の中なんていうのは、九州は一つずつであることと、九州は一つであることは相反しない事実だと思います。逆に九州が一つずつと、九州が一つというバランスをどうウェルバランスをするかというのが、本当の意味で九州のためになりますし、九州の構成員のためになるのではないのかなというふうに思います。

そういう意味では、3月12日から新幹線が通りますけど、より九州が一つというための交通インフラができるという意味においては、今日あえて佐賀ご出身の原口先生、しかも総務大臣経験者で、地方目線で国家の経営を考えておられる方をあえて福岡という所で講演というか、お話を聞いていただいて、我が財団は大した力はないのですけど、少なくとも今日、原口先生のお話を聞いて賛同していただける人が、先生がおっしゃるようにネットワークをつくっていけば、人材育成の意味でも九州の共通のインフラとしてネットワークができていってほしいなという思いで、この講座を開かせていただいたことを申し上げまして、一応ちょっと5分延びてしまいましたけど、今日の講演を終わらせていただきたいと思います。長時間にわたりまして、ご清聴ありがとうございました。