平成22年度第3回第1部:~九州の人的資源・・・~

岩崎育英奨学会 政経マネジメント塾
岩崎育英奨学会 政経マネジメント塾 平成22年度シリーズ

第3回第1部:『格差の負のスパイラルからの脱却』
~九州の人的資源の劣位及び人材育成基盤の欠如について、
中央と九州の格差の観点からそれをどう是正するか~

講師
原口 一博 先生(衆議院議員)
開催日時
平成23年2月12日(土)12:45~13:25
場所
西鉄グランドホテル「鳳凰の間」(福岡市中央区大名2-6-60)

原口 一博(Kazuhiro Haraguchi)

東京大学文学部心理学科卒業。
(財)松下政経塾第4期生として入塾。
1987年、28歳で佐賀県議会議員初当選、
1996年、衆議院議員初当選。
衆議院財務金融委員会民主党筆頭理事、衆議院郵政民営化に関する特別委員会民主党理事、総務大臣、内閣府特命担当大臣(地域主権推進担当)を歴任。

講義内容

岩崎塾長挨拶:

皆さん、こんにちは。岩崎育英奨学会の副理事長の岩崎でございます。今日は土曜日にもかかわらず、また雪が降るあまりいい天気ではないにもかかわらず、200人を超える方に今日ここにご参集いただきましてありがとうございます。心より御礼申し上げます。

この講座に関しましては、九経連の松尾会長に、せっかく私どもとしてはこういう講座を開かせていただきますので、なるべく多くの方に知っていただいて、できれば参加していただきたいということでお願い申し上げたところ、2つ返事で九経連さんのご協賛をいただいて、また会員の皆様に通知を出していただきました。本当に心より九経連様のご協賛に感謝申し上げたいと思います。

岩崎育英奨学会の沿革等に関しましては、印刷物に書いてございます。昭和28年にできまして、主に世田谷区の烏山という所で、鹿児島県を中心として東京の大学で勉強したいにもかかわらず、経済的に苦しい学生をそこでほぼ無料で住まわせまして、大学を卒業するまでそこで勉学に励むということで、大体60年弱その活動をしてきました。もちろん鹿児島において奨学金活動とか、報奨活動とかもやってまいりましたけど、主に学生寮の事業が当財団のメインの事業でございまして、ほぼ1,300人を超える卒寮生が今出てきて、社会で頑張っておられます。

実は、その寮の事業をする中で、非常にあるエピソードをお話ししますけど、15年ぐらい前からちょっと私の父であります理事長の岩崎福三以下ちょっとジレンマというか、ある違和感を覚えました。それは、岩崎福三が鹿児島商工会議所の会頭であったときに、3月12日から九州新幹線が全線開通しますけど、東京のマスコミを中心に、当時の雰囲気でいきますと、九州新幹線なんかいらないのではないでしょうか。財源、お金の無駄遣いだというトーンが非常に多くて、当然、鹿児島商工会議所の会頭でありました岩崎福三としては、予算をいっぱいつけるとか、1年でも早く新幹線を通すためにいろいろな鹿児島経済人としての財界活動をする中で、非常に何かすごく違和感を覚えたことがございます。

その違和感の中の1つに、マスコミの大きな新聞社、テレビ会社の編集の幹部等々に、かなりの鹿児島出身者がいて、その人たちが逆に九州新幹線はいらないという社説を書いている実情を見たときに、岩崎福三は、実際その中の何人かは岩崎育英奨学会の烏山の寮の卒寮生だったりしまして、何か変だということを感じました。

そのときにちょっと余談になりますけど、岩崎福三は、そういう鹿児島出身のマスコミの方と夜会席を設けまして、「あなた方、本当に九州新幹線というのは、九州にとって、鹿児島にとって、郷里にとって役に立たないと思うのですか。おかしいんじゃないんですか。東京だけの目線でそういう形ですることじゃなくて、もっと自分が生まれ育った地方からの目線でものを考えたらどうですか」というお話をした経緯がございました。

そのエピソードに代表されるように、この15年ぐらい、一昔、日本が戦後復興するときは、鹿児島の有為な人材を東京のいい大学を出して、そして役所や大企業に勤めて、そして日本が良くなっていくということが、最終的には地域も地方も良くなってきたという状態が、何のジレンマも感じない状況がずっと続いたのだと思いますけど、この15年ぐらいは、そうやって東京のいい大学を卒業して、大企業に就職した鹿児島の有為な人材が、本当に地方が良くなるために頑張ってくれているのかなといいますと、逆に地方を切り捨てるような、地方と中央の格差が出るようなほうに彼らの才能なりエネルギーが、個人を責めるというか、この国のシステムとしてそうなってしまっているのではないのかなというジレンマをずっと感じてきました。

ただ、残念ながら、その時点においては、日本のための人材育成という大きな錦の御旗を下ろして、鹿児島のための人材育成みたいな地域エゴの看板を掲げるなんて、そういうことはやはりはばかる環境にあったと思います。やはり最終的には人材というのは、国のための人材育成でなければいけないわけです。

ただ、今の状況を見ますと、やはり地域、地方のための人材育成ということに特化した形で、何がしかの組織が、何がしかの関係者がやっぱりします。今の時代は、逆にそういう地方の人材育成をすることが、最終的には中央と地方の格差が広がっている状況自体が、あまりにも配分の変調の原因ではないかということを考えた場合には、地方の人材育成自体を堂々と看板を掲げることが、最終的には日本のためになることではないのかというふうに考えを割り切りまして、この岩崎育英奨学会としましては、寮の事業のほかに、まだ始めたばかりで方法論としてはつたない方法論ではございますけど、政経マネジメント塾というものを始めた経緯がございます。

今年この年度におきましては、3回目の講演でございます。今日は、原口先生、私は個人的に郵政民営化のときの問題で知己を得まして、非常に先生のお考えがそういう地方目線で日本の政治を考える方だと思いましたので、今日あえてお願いしましたらお時間をつくっていただきましたので、せっかくですからこうやって一人でも多くの方に、先生のお考えを聞いていただこうと思ってこの会を催した次第でございます。

少しあいさつが長くなりましたけど、以上、その辺の経緯ご説明をさせていただきまして、私のあいさつに代えさせていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

原口先生:

皆さん、こんにちは。ご紹介いただきました、衆議院議員の原口一博です。今日は岩崎塾長をはじめ、皆様にこういう機会をいただきまして本当にありがとうございます。お手元に3種類の資料を差し上げています。1つが、地域主権改革、そしてもう1つが、ICT新ビジョン、「光の道」構想、そして最後が脳情報通信融合研究、この3つです。

まず、講演に入る前に格差という話をしたいと思います。ちょうどあれは5年前でした。読売新聞の渡邉恒雄主筆から、「検証・戦争責任、当時から言うと60年前に終わった戦争、あの戦争がなぜ起きたか。そしてなぜ3年8カ月やめることができなかったか。これについて検証したい。ついてはあなたも加わってくれ」という話でした。軍部が独走してメディアが一色になりました。誰も声を上げられなくなりました。暴力に対して誰もあらがうことができなくなりました。そして亡国の道に突き進んでいきました。

では、当時のリーダーは今よりも劣っていたのでしょうか。当時の国会は機能していなかったのでしょうか。当時の日本は今よりももっとひどかったのでしょうか。その思いでずっと見てみました。国会の議事録にあたりました。総理が1年以内に替わる、それは今とよく似ています。そして、しかし、国会議員は当時民主主義が根付いてきていて、そして第一次世界大戦に勝った日本、いわゆる富国強兵に明治維新成功して、そして列強に追いつけ追い越せ、そういう時代です。殊更今よりも劣っているというふうには思えません。

では、何が起きていたのでしょうか。国会の議事録を読み解く中で、不思議なことに気付きました。それは、多くのものが両論併記なのです。あれもあればこれもあります。そして決定がそこで、この後言いますが、私の「光の道」の構想も、今の内閣になって、そして両論併記になっています。両論併記であれもありますね、これもありますね、そこで決定がされていません。誰と誰が決断をしているかということがよく分かりません。

ちょうど昭和12年にこういう書物にあたりました。昭和12年です。国体の本義、国の体制の本義と書きます。ここにナチスドイツの記述がありました。ナチスドイツについて、当時の日本政府がどう考えていたかということを知るために、大変大事な資料です。その3年後に日独伊三国同盟を結びますから、さぞ褒めて書いてあるだろうというふうに私は思って読みました。ところが、今私たちが考えている全体主義に対しての恐れ、あるいは思想のまさに退廃、その危険性、いくつも書いてありました。しかし、不思議に思われませんか。当時の日本政府が、危険だと思っていたナチスドイツに対して、3年後に結ぶわけです。どこでどう変わったか、それが分からないのです。

つまり、私たちが今目指している地域主権改革、これは主権を地域に渡そうなんて話ではないのです。主権者である国民が、自らの地域の歴史について学ばずして、国の歴史を学ぶことはできません。主権者である国民が、自らの地域を自らの力でつくらずして国をつくることはできないのです。

私たちが地域主権改革でやろうとしていることは何でしょうか。責任の所在の、つまり民主主義の改革なのです。今格差が広がって、そして例えば地域の中では自治会がなくなったり、女性の会がなくなったり、つまり地域を育む下支えとなっていたものが多く壊れています。ファシズムがどうやって大きくなったのでしょうか。その理由は格差にあります。人と人とを分断させて、目の前にある自分よりも少しいい思いをしている人、その人に対する怨嗟の気持ち、その気持ちをもとにエネルギーを大きくして、結局最後は、誰もそれに逆らうことができなくなります。

2009年の総選挙、政権交代をしました。あの政権交代の選挙の私たちの相手は、自民党や公明党さんでは実はなかったのです。私たちの相手は今どうなっているのかといいますと、自民党さんや公明党さんの力がないと言っているのではないのです。そうではなくて、彼は少なくとも私たちと同じ民主主義の土俵に立っています。今、多くの者はもう国会なんかいりません。そうですね。多くの国が一院制になっています。一院制になって変化に対応を即座にできるように冷戦後に変わっています。しかし、日本の国会はねじれを抱えています。衆議院と参議院を対等に合併しようという議連もありますけども、何も決めることができません。では、決めることができない民主主義の国会であるのだったらもういりませんよ。あなた方はもういりませんよ。そういう議会制民主主義そのものを壊していこうというモメンタム、そことの闘いなのです。

私はこういう名刺をつくっています。後ろの方、ご覧になれますか。これは花が添えてあります。障害を持った人たちが一枚一枚つくってくださっている名刺です。押し花です。ちょうどこの隣の鳥栖というところでつくっています。この押し花の名刺を一枚配りますと、その施設に50円入るようになっています。

何でこんなことを言うのでしょうか。私たちがどういう人材を地域からつくらなければいけないのでしょうか。昨日私は、松下政経塾、私を育ててくださった松下幸之助さんのパナソニック本社で講演をさせていただきました。松下さんは、背は150センチちょっと、小学校は中途でやめなければなりませんでした。貧乏で、体も弱くて、多くのご兄弟は中途で亡くなっています。学校に行くこともできませんでした。しかし、松下さんはどういう経営をしたでしょうか。人を生かす経営をしました。人を生かす経営です。なぜこんな名刺を持っているでしょうか。後で脳情報通信のところでも申し上げますが、私の友人でこういう友人がいます。彼はカウンセリングをしています。人の悩みを聞いています。だけど、こうやって言葉を出すことはできません。声を出すことができません。手も足も口も動きません。だけども人の悩みを聞くことができます。どうやってやるのでしょうか。例えばこういうコンピューターに目線の動きを読ませて、そして目の玉の動きを、例えば上を向けば「あ」、右を向けば「い」というように言葉に変えて、そして人の悩みを聞いています。彼はこう言いました。「できないことが問題なんじゃない。できることが大事だ」。皆さんも初めてお給料をもらったときのことを覚えておられますか。生まれて初めてお給料をもらいました。お給料をもらう中から税金払いました。税金を払うというのは義務だけではない、権利なのです。障害というのは、自分の中にあるのではありません。社会の側にあるのです。私たちが地域主権改革で目指すものは、学びの共有なのです。今できない病になっています。

ちょうど2カ月前に、アメリカでクラウドの会議がありました。世界60カ国から4万人の人たちが集まっていました。4万人の人たちが集まっていて、新しい情報通信のクラウドの話をしていました。しかし、その真ん真ん中にあるのは日本の技術です。この福岡が採用されているルビーというプログラム言語を使って、どのように世界が発展していこうかということを考えているわけです。4万人のうち日本人は私を入れて50人でした。

私たちはなぜ地域主権改革をしたいと考えているでしょうか。それは、中央政府の役割が圧倒的に変わってきているからです。皆さん、この福岡、あるいは鹿児島、お隣の佐賀でもいいです。1980年代、世界の10大銀行のうちの8が日本の銀行でした。8つまでが日本の銀行でした。もうこの福岡も銀行が随分変わりましたよね。そこでどういうルールが変えられたでしょうか。オリンピックで日の丸が3本立ちますと、4年後のオリンピックのルールが変わります。例えば、スキーのジャンプで、札幌で3つ一番高いところに日の丸がはためきました。その4年後、ジャンプのルールは変わりました。ミュンヘンでバレーボールの松平ジャパンが勝ちました。その4年後ルールが変わりました。同じことは経済の中でも起きているのです。1980年代、世界の10大銀行のうちの8つが日本の銀行だったときに変えられたルールは何でしょうか。歴史を学んでみてお分かりですか。BIS規制です。自己資本を8%持っていませんと、世界に出てはいけないというルールが変わったのです。

私たち国会議員は何をやっているのでしょうか。中央政府の人間は何をやっているのでしょうか。自由主義社会、人権と教育、人間の尊厳、自由の中でルールの競争をやっているのです。ルールの競争をやるべき政治家が、どこに橋を付けた、どこに道路を付けた、どこに規制を付けたということをやっていたら、世界と戦えないのです。

これが2050年の日本の姿です。今年、中国にGDPで抜かれました。8%成長で中国が今のまま8年間続けば、8年後は日本のGDPの倍になります。これが2050年、中国が1番になり、アメリカが2番目、次がインド、そしてブラジル、メキシコ、ロシア、インドネシアときて日本になります。少子化している中で、このような経済成長をすれば何が起きるでしょうか。私たちは必要なサービス、公共サービスを国民に提供できなくなります。

これが財政です。今、増税の議論が出ていますけども、平成9年、このときに私が当時の宮澤財務大臣と議論をしてつくったのがこの中期財政試算というものです。税の言葉は難しいのですが、簡単に言いますと、税収の弾性値を1.1、そして経済成長を3.5と、1.75というふうに仮置きしたときに税収はどうなるかというのを示したのがこの絵です。それまではこういうものさえなかったのです。財政の中期展望を示す絵さえありませんでした。もっと言いますと、私たちは昨日財務省が919兆円の借金を日本は抱えていると言いました。しかし、919兆円の中に何が入っていますか。919兆円の中に入っているもの、外為特会の赤字は入っています。赤字国債の赤字は入っています。分かりませんか?調べてみてくださいね。赤字国債の赤字も、外為特会の右左のバランスシートの赤も、この中の919兆円に入っているのです。皆さん、今日私が申し上げるのは、現実を共有して、現実の正しい姿を共有すれば、答えはおのずと出てきます。特別会計と一般会計との連結、その連結の数字さえないというのが今の状況なのです。

私が総務大臣のときに、年度末に使い切る予算を1,000億円削減しました。削減した部分を消防やいろんなものに割り振りました。私が総務大臣のときに、レガシーマップというものをつくりました。レガシー、何でしょうか。コンピューターに、中央政府は1年間に4,000億円お金を払っています。そのうちの2,000億円は、古い、いつ入ったかも分からないようなシステムなのです。つまり、私たちが会社だったら、自分たちがどこにどういう資源を投入しているかも分からないで、やみくもに税だけを増やすということはあり得ません。つまり、1.1の弾性値で、1.75の成長をしていれば、いや、3.5の成長をしていれば、ここをご覧ください。平成22年です。93兆円です。一般会計ベースで去年の税収は、本当は93兆円なければいけなかったのです。ところが、去年の税収はいくらでしょうか。当てると思って下を向かなくていいですよ。去年の税収は37兆円なのです。これだけ乖離しているのです。

何を申し上げたいのでしょうか。私たちはたくさんの知恵を持っています。私たちは1,400兆円の資産、先ほど岩崎塾長がお話になりました。地域に宝を持っています。しかし、その富を奪い取っているものは何かをはっきり見定めてほしいのです。この九州だけでオランダ以上のGDPがあります。

この間、私は北海道、東北の県会議員さんが、超党派で県会議長会が私を呼んでくださいました。民主党の総務大臣だった私をです。百数十名の県会議員さんが私を呼んでくださいました。なぜでしょうか。大阪やこの九州に負けられないと思っているからです。関西圏、今度出先機関をみんな丸ごと関西の広域連合で、出先の権限も財源も全部自分たちでやりますよということを決められました。この九州、岩崎さんが頑張っていただいて、鹿児島の金子県会議長も本当に頑張っていただいて、ここの麻生知事が頑張っていただいて、出先は、九州は丸ごともう自分たち、この九州の中で全部賄います。だから自分たちに権限、財源くださいということを、九州の広域機構というのがスタートしたのです。ところが、東北や北海道には影も形もありません。だから私を呼んでいただいたのです。

これが、知識情報社会を支える基礎です。2015年をめどに「光の道」100%、これを、ブロードバンドをつくろうということです。これは何でしょうか。ブロードバンドといいますから、何か訳分からないものだというふうに思われるかも分かりませんが、明治の時代、私たちの先輩は、この近代国家の基礎をつくるために、歩いて行ける距離に3つのものをつくりました。歩いて行ける距離につくった3つのもの。1つ目、何でしょうか。派出所です。社会の安心・安全をつくったのです。私は、アメリカのジェナカウスキーさん、私のカウンターパート、オバマさんの同級生ですけど、彼と一緒に情報通信のセキュリティ、これのタスクフォースを立ち上げました。安心・安全をまずつくりました。

歩いて行ける距離につくった2番目、それは郵便局です。郵便局は、官から民にと、昔、ちょっと前の政治家たちが言っていましたが、あれは官から民ではないのです。あれは公なのです。岩崎さんのように地域でお力を持った方々が、当時国家がお金がありませんでした。国家にお金がなければ、民間でお金がある人はお金を、土地を持っている人は土地を、そしてつくったのが郵便局のネットワークです。郵便局では一番振り込め詐欺が少ないです。なぜでしょうか。顔が見えるネットワークだからです。顔が見えますから、「おじいちゃん、おばあちゃん、あれね、鹿児島から福岡に、博多に出しているあんたの孫やなかばい。だから振り込んじゃいかんよ」。地域の顔が見えます。まさに日本独特のネットワークなのです。官から民にではなくて、私から公、これが郵便局のネットワークです。

そして、歩いて行ける距離につくった3番目のもの、これがすごいです。明治の5年と6年の間だけで、私たちの先輩は学校をつくりました。歩いて行ける距離に学校をつくって、すべての人たちに学ぶインフラをつくったわけです。今回、私がここで言っている「光の道」というのは、まさにこれです。みんなが情報を共有することによって、お互いが学べます。

今世界の中で競争力の高い国、その国はどういう国でしょうか。フィンランド、デンマーク、あるいはスウェーデンです。フィンランドでは3時に働く人たちが家に帰って、保護者が子どもたちに読み語りをしています。だから国語力が一番高いというのは、直接学ぶことを、直接親から、国語、読み語りを学ぶからです。多くの今までの教育は、さっきも岩崎さんとお話をしていましたが、100点満点、皆さんも受験のときにどう言われたでしょうか。解けないものは後回しにしなさい。解けるものから解いて、そして解けたものがケアレスミスのないことを確認して試験に臨みなさいと言われます。つまり、今までの日本の中の100点満点さんの教育は、できないことは、それを解こうとはしないのです。学ぶ喜びを知る前に、学ぶ大変さを知ってしまっています。

みんながお互いに情報を共有してソリューション、解決方法を共有して、そしてお互いがお互いを支える、そういう教育をもうスタートさせました。それが未来の学校、ヒューチャースクールです。テレビカメラが回っていますからあまり言いたくはありませんけれども、これを仕分けた人間がいまして、とんでもありません。もう仕分けた人間を仕分けるぞと言いましたら、今回予算また通りました。皆さんの周りでももうこれスタートしています。5校ずつスタートしています。これは何でしょうか。教科書を電子化するという話ではないのです。真・善・美、大きな志、この日本に居ながらも、私の佐賀に居ながらも、地域に居ながらも、世界最高の教育に触れることができます。あるいは、電子教科書の話をしているのではないのです。私たちは思考の過程を、例えばこういう電子ノートで、子どもたちの間から共有できれば、お互いが共有できれば、お互いの思考の過程を、あるいは創造の過程を共有できます。是非シンガポールの貧しい地区にある未来の学校へ行ってみてください。南青山小学校でやっている子どもたちの教育を見てみてください。

私も松下政経塾でさまざまな、まずは月に300万円電気製品売ってこい、あるいは工場に行ってこい、いろいろな研修を受けました。松下政経塾で受けた中でこういうプログラムがありました。それは、NASAの宇宙飛行士が実際に受けるプログラムです。月に20時間ロケットが壊れて、20時間生き残りのためにいろいろなものを使って生き残りなさいというプログラムです。どんなに宇宙飛行士になるような天才でも、これを一人で解いたときには、生存率、生きる確率は5割を超えません。それを三人寄れば文殊の知恵という言葉がありますが、宇宙飛行士の候補者3人で解けば、これが65%~75%、つまり生きる確率が15%~25%も上がるのです。

私たちは、この「光の道」100%、これで×ICT戦略、情報通信によって世界の経済成長のほとんどは情報通信によってなされています。クラウド化することによって、多くのものが高度化します。クラウド化することによって、お隣の韓国ではもう電子政府、受発注も、あるいは住民票もボタン1つです。私たちは行政にアクセスするコストがものすごく高いです。医療についてもそうです。皆さん日本はカリフォルニアよりも狭い面積なのです。カリフォルニアよりも狭い面積の中に、限界集落があり、そしてたった一人で亡くなっていくお年寄りの方がおられます。こんなことあり得ないのです。

いや、そんなことを言ったって都会ばかりを、皆さんのこの地域主権改革の最初の絵をご覧になってください。今までの改革はどういう改革かといいますと、トリクルダウン型と言います。一点を誰かが持って、そして誰かを、強い人間をもっと強くすれば何とかなるだろうという改革なのです。しかし、これは決して成功しません。地域において自由に、義務付け、枠付けをなくして、自分たちのことは自分たちでやる、その改革なのです。

この右にあるファウンテン型、ファウンテンというのは泉という意味ですけども、泉のようにわき上がる、人を生かす経営、地域を生かす経営、地域の資源や人が人であるために必要なものを生める、この経営が今求められているのです。次をご覧ください。

例えば、高齢者や障害者の支援策、この3ページです。これだけ分かれているのです。まちと市町村でこれだけ分かれています。

子育て支援策です。これも市町村、県、また、まちでこれだけ分かれているのです。一緒にやればいいではありませんか。今地域から大きな変化のうねりが生まれてきています。私たちは、国・地方、協議の場をつくって、そして新たなもうプログラムを動かしています。5ページがこれです。5ページのこれを出したときに、多くの人たちは私にこう言いました。「原口さん、あなた大臣なのに」。実はこの3分の1だけを出したのです。3分の1の絵だけを出しました。そのときに何とみんなが言ったでしょうか。「国が全部決めてくれなきゃ」と言うわけです。地域主権改革って地域が主役なのです。キャンパスを全部僕がつくって、皆さんにこれをやりましょうというのだったら、それは地域主権改革ではないのです。

心理学の実験にこういう実験があります。10%できている数、半分できている数、9割方できている数、どれでもいいから選んでごらんと言って、子どもたちに選んでもらいます。地方と子どもは違いますけども、当然のことながら伸びる子どもはほとんどできていない数、自分のことを自分で考え、パズルは10%、できていないパズルを自分でつくっていきましょうと、これを心理学の言葉では知的コンピテンス、知的潜在力と言います。

私たちは多くのものを中央政府が決めてきました。そして中央政府が決めてきたことによって、たくさんのものを任せてきました。しかし、任せてきたのはいいですけども、例えば道路をつくると言いながら、直轄事業負担金のうちの3割は天下りに消えていました。道路をつくると言いながら、大阪の橋下知事が言うように、ぼったくりバーの構造があったわけです。私も佐賀の県会議員を2期させていただきました。今でも後悔している予算があります。それはどういう予算でしょうか。私の地域は、子どもたちの交通事故が多かったのです。だから自分たちで自由に使える予算があるのでしたら、子どもたちの通学路に使いたかったのです。しかし、そこで中央政府が出したメニューは、河川をつくるというメニューでした。国が10億円出して、市が5億円出して、そして県が5億円出して、合わせて20億円にしたら河川をつくっていいですよという予算でした。皆さんが県会議員だったらどうされますか。私はその予算に賛成しました。なぜでしょうか。国から10億円くるからです。反対すればその10億円はきません。

しかし、もし自分のお金であれば、もし自分たちがこういうひもが付いていて、河川にしか使っちゃいけないというひもが付いていなければ、私たちは同じ公共事業でも間違いなく子どもたちの通学路の安全に使いました。こういう予算が公共事業だけで16本あります。これを一つまとめにしました。

行程表です。いわゆる原口プランというものです。税源、財源を自らの地域が、自らが豊かにします。これを国の「創富力」、富を生み出す力というふうに言っています。ここの黄色のところ、地域主権戦略大綱のところにはさまざまな抵抗がありましたけれども、それは国民の皆さんが選んでいただいたおかげで、大綱を閣議決定することができました。7ページ、8ページは、その大綱の中身です。そして、地域主権一括法ということで、1万にも及ぶ義務付け、枠付け、これを撤廃することが、その道筋が今ついてきたわけです。

この撤廃をしたときに何が必要でしょうか。それはまさに地域の人材なのです。皆さん、私たちの県会議員、私たちの市議会議員、私と同じ国会議員と同じ選定要件です。そうすると何が生まれているでしょうか。四六時中県議会に行ける人しか議員になれないとするのだったら、例えば、女性の頭の上にはまだ見えないガラスがあると言われています。女性の代表が本当に市議会や県議会にたくさん行けるでしょうか。あるいは、サラリーマンや、一般の働いている人たちの代表は行けるでしょうか。もう選ばれるところから代表制のミスマッチを起こしているのです。

私たちは1回中央にお金を集めて、それを中央に分配します。例えば特別交付税というものを持っています。総務大臣になって特別交付税の陳情を見ました。ちょうどここからあそこぐらいまで陳情書がありました。陳情すれば自分のところの予算が増えます。そうであれば、自分たちが来年どれぐらい使っていいのかということが分かりません。税の、あるいは予算の予見可能性もなかったわけです。それを全部透明にしました。全部透明にすることによって、安心・安全に振り向けていったわけです。

10ページ目、これが地方自治法の一部を改正する法律案です。地方自治法というのは、自治体、まさに地方自治の憲法と言われています。これを今の二元代表制も含めて、あるいはいろいろなところでもう出ていますね。大阪府と大阪市が一緒になります。あるいは新潟県と新潟市が一緒になります。岩崎さんは、廃県置藩ということを言われています。今まで歴史と関係のない合併をやってきたところはみんな失敗しています。大合併が過去3回起こりました。その起こった大合併は明治の大合併、昭和の大合併、平成の大合併です。過去2回の大合併は歴史を調べていただきますと、全部教育を中心にしています。そこにする人たちに、自らの歴史や自らの成り立ちや、自らの共同体についての誇り、これを学ぶために合併をしているのです。

ところが、3回目の合併、平成の大合併は何を中心にやったでしょうか。財政の論理を中心にしました。そのために何が起きているでしょうか。3,000あった自治体が1,700になって、私が各自治体にお願いをしましたけども、前、村役場にあった歴史書が、今散逸をしようとしているわけです。

12ページ目をご覧ください。これが地域主権戦略大綱と、13ページと14ページが実際に義務付け、枠付けが取れたものです。メディアはこの最初の抵抗のところだけを報じられました。ですから、最後どうなったかというところまでは、国民の方々がご存じありません。この間、チュニジアで26年間続いた政権が、26日で変わりました。エジプトは、30年間続いた政権が、ムバラクさんが3週間で辞めるという形になりました。情報の流れが変わっています。私たちは、「光の道」情報通信も大きく変えようとしています。

アメリカは、私たちの5年後ろを走っていました。しかし、先月の一般教書演説でオバマさんは、私たちの3年先に行くという話をしました。なぜ「光の道」が必要なのでしょうか。それは、今までの例えば医療単体、医療だけとってみても、今までのようなビジネスモデルでは、私たちの今のマンパワー、今の税、今の経済力では賄えないからです。

例えば、1つだけもう最後に例を挙げます。私は東京のある大学病院の被害者の会の事務局長をしています。医療法を今度変えるために3回法案を出しました。それどういう法律でしょうか。私、3人子どもがいるのですが、12歳の子どもが生まれた12年前、同じ日に、私の友人が女の子の赤ちゃんが生まれました。1歳になったときに、つたい歩きができるようになりました。2歳になったときに、お父さんと言ってくれるようになりました。しかし、3歳の誕生日を一緒に迎えられませんでした。東京の大きな病院で心臓の手術を受けて、その心臓の手術は間違いで、その間違いを隠すためにカルテにうそが書かれていたということで裁判になった病院です。3歳の子どもさんの心臓ってこれぐらいなのです。真っ黒になった心臓の写真を持ってきて泣き崩れられました。何でこの世界の、6分の1をつくるような大きな国でそんなことが起きるのでしょう。皆さんの周りでも医療事故で苦しんでいらっしゃる方、たくさんいらっしゃると思います。なぜ、言葉が出ませんでした。1週間も2週間もご飯が食べられませんでした。しかし、そこで終わるのだったら政治ではないのです。医療法を調べました。医療法は昭和26年にできた法律です。この法律はどういう法律かといいますと、戦後すぐできたために、何が規定されているかといいますと、取りあえず病院にはお医者さんが何人いなければいけない、ベッドがいくつなければいけない、看護師さんが何人いなければいけない、数だけを規定しているのです。質をチェックできていませんから、何が生まれているかといいますと、私たちは自分の体で病院を確かめているのです。この辺、原口病院ってありますか。実名を出すのはやめましょう。A病院に行きましたけども、ちょっとまずそうだからB病院に行く、重複受診です。これを変えないといけないのです。情報通信、みんながつながることによって、お互いがソリューション、解決方法を学び合い、お互いが情報をしっかりと共有します。共有することによって協力し合える、そういう社会をつくっていきたいというふうに思います。

これが「光の道」の実現です。教育なのです。すべてが教育です。お互いがつながること、お互いがお互いの良さを生み出すことです。919兆円借金があると言っていますが、私たちの知的財産、財産はいくらありますか。経営者でしたら資産と借金がいくらあるか、考えているのが当たり前なのです。中央政府が持っている私たちの知的財産は、たったの46億円と言っているのです。知的財産が寝ています。お金も寝ています。私たちの年金は、少子高齢化だけでなくなっているのではないのです。私たちの年金は、運用に失敗してなくなっているのです。総務大臣時代、GPI、年金運用機構、これがどういう運用をしていたかということを明らかにしました。ポートフォリオ、どこにどういう運用をするかということを議論しないのでしたら運用機構なんかいらないのです。

私たちは今、日本を大きくこの強さを外に向かって開こうとしています。そのためには、岩崎さんがやっておられるように、地域でお互いの情報を共有し、お互いを励まし合い、お互いを支え合う、こういう人材づくりです。

これが×ICT計画の推進です。世界の多くの先進国が、このICTによって変わっています。CO2の削減、後で申し上げますが、緑の分権改革、新しい公共、地域主権改革、そしてこの光の道、この4つが日本を地域から変えるためのソリューションです。

もうこれで最後にいたします。私たちは、多くができない病の人たちに、今の一部の世論が支配をされています。しかし、私も総務大臣でしたから、テレビを見ないでくださいとか、何を見ないでくださいとは言いません。確実に変化が起きています。去年の7―9の経済成長は世界最高4.5%でした。地域で今までの枠組みを超えていきましょう。地域でお互いの知恵を出していきましょう。地域からの富を創る力、創富力、後で岩崎さんとの対談で申し上げますが、これをつくろうという動きが確実に広がっています。

非難ばかりされて育った子どもたちは、人を陥れることを覚えます。力に頼る、暴力にさらされた子どもたちは、力に頼ることを覚えます。それに対し、真・善・美、大きな志や、あるいはさまざまな歴史の真実に触れた人たちは、世界中の愛情を形に、夢を形にすることができます。是非、このビジネス塾で皆さんがそういうリーダーになってください。私たちが持っている可能性、私たちが持っている力、そして私たちが何にそれを奪われているのでしょうか。それを学びの中から、情報を共有する中から見つけていっていただければ幸いでございます。ご清聴ありがとうございました。